2011年10月10日16時14分掲載  無料記事
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中南米

チリのピニエラ大統領 抗議運動を厳罰化する法案を国会に提出

  インターナショナルヘラルドトリビューン(10月10日付)によると、公教育の充実を求め、学生や教師、市民による激しいデモが全国で起きていたチリで、ピニエラ大統領は抗議運動を抑制するための厳罰化法案を国会に提出した。法案では学校などの公的施設を占拠した者は学生であるなしを問わず、懲役3年までの刑罰に処するという刑法改正案である。今年、5月以来、200以上の中学や大学が占拠されたとされる。 
 
  チリの新聞「ラ・テルセラ」によれば、ピニエラ大統領はConfech(チリ大学生同盟)に、交渉のテーブルに戻って欲しいと訴えた。しかし、ピニエラ大統領が約束しているのは学生たちが求める学費の完全無償化ではなく、「必要な人にのみ無償化」になっている。 
 
  現在Felipe Bulnes教育相が提案している政府案は奨学金の対象を収入の少ない世帯の下から60%までの家庭の子弟に広げるというものである。(前回のピニエラ大統領の提案は下から40%だった) 
 
http://latercera.com/noticia/politica/2011/10/674-397880-9-presidente-pinera-ojala-la-confech-vuelva-a-la-mesa-de-dialogo.shtml 
 
■ピニエラ大統領、無料化は否定し、貧困層40%に奨学金を提案 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201110021115350 
 
■チリ大学生同盟(Confech)のウェブサイト 
  6月30日の「25万人抗議デモ」などの映像がある。 
http://fech.cl/ 
■「チリで再び大規模な学生デモ 273人が拘束される」 
 
  チリの政治学者パトリシオ・ナビア氏によると、チリでは独裁政治が終わった後、学生が高等教育を受ける割合は大幅に増え40%に達している。しかし、ピノチェット時代に教育が民営化されたことで学費の有無で受ける教育に開きが生じている。 
 
  「現在、チリで行われている教育システムはピノチェト時代の80年代に導入されたものがそのまま継続している。小中学校の段階では国公立の学校以外に、バウチャースクールが導入されている。チリの小中学の生徒の約半数がバウチャースクールに通っている。「バウチャー(vouchar)」とは英語でクーポン券とか、引換券、保証人などを意味する言葉である。私立学校に政府が国の教育機関となるためのバウチャー(資格)を与えているのである。しかし、バウチャースクールに教育を依存すれば親の資力次第で入れる学校が異なる。貧困な家庭の子弟はクオリティの高い教育を行っているバウチャースクールに入ることができない。それは貧富の再生産にもつながるというのだ。大学だけでなく、こうした教育の民営化を改めよ、と学生や親、教師たちが抗議をしているのである。」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201108150232401 


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