2011年10月19日15時08分掲載
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ビルマ民主化
ビルマ人拘留者の本国送還に合意 マレーシア政府の対応に批判続出
10月中旬にマレーシアを訪問したビルマ(ミャンマー)のウーマウンミント副外相と会談したヒシャムディン内相は、ビルマとの間で拘留されている自国民の相互送還に合意したことを明らかにした。これに対して人権団体などからは、送還後のビルマ人の人権状況が保障されないとの懸念の声があがっている。(クアラルンプール=和田等)
ヒシャムディン内相は、現在マレーシアにはビルマ人約1000人が拘留されているが、拘留施設の混雑状況を緩和するうえで本国送還が不可欠になったと語った。内相は、ビルマで拘留さされているマレーシア人の数は明らかにしなかった。建前上は拘留者の交換を掲げているが、マレーシアからのビルマ人の一方的な追い出し措置となりそうだ。
マレーシア政府は8月末までの約2ヵ月にわたり、合法・違法を問わずマレーシアで働く外国人労働者の生体認証(バイオメトリック)登録を実施、違法就労者に対しては登録後、一定の条件を満たせば滞在を合法化する措置をとった。これに応じて外国人労働者約230万人が登録を済ませたが、国籍別ではインドネシア人(約105万人)、バングラデシュ人(約40万人)に次いでビルマ人(約25万7000人)の数が多かった。
ビルマ人の本国送還案に対しては、マイグラント・ケア・マレーシア、マレーシア民衆の声(スアラム)、テナガニータなどの人権団体から批判が続出。「ビルマ人の多くは本国での迫害から逃れて国外に出てきているので、経済的な理由でマレーシアに働きに来ているインドネシア人やバングラデシュ人とは状況が違う。ビルマ人を実質上の政治難民とみなさなければならない」(マイグラント・ケア・マレーシアのアレックス・オン幹事)と主張している。
スアラムも「ビルマ政府は最近、政治犯5000人中120人を釈放し表面上は民主化に向けて歩み出したようにつくろっているが、それがビルマでの人権や自由、平和が回復されたことを意味しない。マレーシアがビルマとの相互送還に合意したことで、非民主的かつ専制的なビルマの体制にさらなる認知を与えることになる」との批判的な見解を表明している。
マレーシアはオーストラリアとの間で難民交換協定を結んだものの、国連難民条約を締結していないマレーシアでの難民の扱いへの懸念が出たことや豪州側が法的な問題をクリアできなかったこと、法改定に対する議会での承認を得られるめどがたたなくなったことから、難民交換はお蔵入りになったばかりだった。これに続いてマレーシアではあらためて、難民や移住者の扱いをめぐる議論が沸騰しつつある。
これに対してヒシャムディン内相は「送還対象になるビルマ人に難民認定を受けた人や亡命を求めている人は含まれない。出入国管理法などの関連法に違反して拘留されているビルマ人が送還の対象になるということをはっきりさせておきたい」と反論している。
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