2011年10月25日00時39分掲載
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米国
ティー・パーティのファックス作戦を見る
「ウォール街を占拠せよ」運動を共和党右派である「ティー・パーティ」運動への対抗勢力ととらえる見方がある。そこで「ウォール街を占拠せよ」が盛り上がっている今、一方のティー・パーティのホームページをのぞいてみると、そこにはファックス作戦(Fax Blast)なるものがいくつも並んでいた。http://www.teaparty.org/protectmilitary.php
ファックス作戦はサイトによれば「政府の赤字財政を終わらせよう」とか、「我々の軍隊をワシントンの予算カットの脅しから守ろう」(「ワシントンの汚れた手を軍事費から遠ざけよう」)とか、「オバマ保険にNO」とか、ティー・パーティの狙いが並んでいる。これらをクリックして書式に入力すると、ファックスが送られる仕組みのようだ。ただし、ファックス料として約57ドルか、約89ドルかかる。価格の違いはファックス枚数の違いによる。
この作戦はファックスブラストと名付けられており、ブラストには「爆風」「爆破」と言った意味がある。今、入力すれば100人の全上院議員と435人の全下院議員に届きます、とある。
明快な目標を示し、明快な意思表示ができる仕組みをホームページに設置しているのである。政治の方向性はともかく、ティー・パーティの方法は大衆にとっては簡単に政治参加できる機会になっているのではないだろうか。つまり、そこで何かを考えるというより、サイトの訪問者に勧められるのは行動なのである。
また、「私は携帯活動家!」というタグもある。http://www.teaparty.org/callwashingtonteaparty.html
携帯電話を持ったお姉さんが力こぶを誇示している絵が出ている。第二次大戦中のプロパガンダポスターに似たデザイン・配色である。
そこには’Have a CWTP in your home or office'とある。CWTPとは、Call Washington Tea Partyの頭文字で、友達を誘って 自宅や仕事場に携帯を持ち寄って、「ティー・パーティ(茶会)」を開きなさい、というのである。スナック、ピザ、軽いサンドイッチなどと紅茶!を出すこととある。紅茶は大文字で「!」マーク付である。珈琲ではなく紅茶にこだわっているのである。’pass the hat to cover snack costs 'とあり、軽食の経費はみんなで出し合って、とある。
で、集まって何をするのか、と言えば、一人ずつ順番に議員に電話し、周りの者はその様子を見る、ということだ。そして、その「茶会」の風景の写真を撮り、あなたのブログに貼りつけて、とあり、同時にティー・パーティの本部にも送りなさいとある。さらに、ファックスブラスト(ファックス作戦)も同時にやりなさい、とある。この徹底的にマニュアル化された政治運動はまさにアメリカンとしか言いようがない。ファーストフードチェーンにそっくりである。
サイトにはティー・パーティストアもあり、「クリックしなさい」「クールな品々を買いなさい」などと書いている。何かにつけ、「○○しなさい」と指示されるのだ。クリックしてみると、様々なフレーズをプリントしたTシャツが10ドルとか、20ドルで販売されている。
たとえば、「リベラルは自由(リバティ)以外はすべてリベラル」という標語には自由の鐘の絵がつけられている。http://www.teapartyswag.com/index.php?main_page=popup_image&pID=666
この自由の鐘は最近、日本の書店でなぜか大量に販売されている500円の第二次大戦戦史のドキュメンタリーDVDシリーズで必ず画面に出てくるトレードマークである。というのは、ドキュメンタリーは米軍のプロパガンダだったからだ。
また「サイはお断り」というTシャツもある。共和党のマスコットは象である。ではサイは何の意味か、と言えば共和党穏健派のことだという。
http://www.teapartyswag.com/index.php?main_page=popup_image&pID=692
こんな風にTシャツを買って着ることでセクト的な一体感が味わえるのだろう。筆者は必ずしもティー・パーティに賛同するものではないが、こうした方法だと明快だし、仲間意識が盛り上がり、資金も集めやすい。ティー・パーティ運動が共和党を動かす勢力になった理由の一端がうかがえるように思われる。
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