2011年11月02日10時39分掲載
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高垣敏博著「食のスペイン語」(東洋書店)
「食のスペイン語」は昨秋出版された本です。新刊というと、せいぜい1〜2カ月のスパンで考える人も多いでしょうが、ここではあえて過去30年分くらいは新刊と考えたいと思っております。著者の高垣敏博氏は東京外国語大学大学院教授です。取り上げられているスペイン語会話は食に関するものばかりです。(英語にないアクセント記号などは媒体の都合上省略いたします)
ヒロ「いい匂いだなあ!」
Que bien huele!
フリオ「うん、エビのニンニク風味だよ。」
Si,son gambas al ajillo.
ヒロ「ぼくはニンニクとオリーブオイルで料理したものなら なんでも大好きだ」
A mi todo lo preparado con ajo y aceite de oliva me chifla.
フリオ「ぼくも。それじゃ、このバルで何かつまむことにしようか」
A mi, tambien. Venga, vamos a merendar algo en este bar.
参考表現として「おいしそう」「よだれが出そう」「いい匂いがする」「何ていい香りだ!」なども紹介されています。こうした食へのこだわりは英会話本のスキットではあまり触れた記憶がありません。
巻末にはニンニクスープや海の幸のパエリヤ、アロス・コン・レチェ(米をミルクで調理したもの)などのレシピも参考に紹介されています。食と言えばフランス料理やイタリア料理が中心で、スペイン料理は今まであまり紹介されて来ませんでした。
語学を別にして、スペインの食に関する本は最近いろいろ出ています。写真を多用したとんぼの本のシリーズの一冊、「スペインは味な国」(文:東理夫、写真:菅原千代志)は1992年に初版が出ているのでスペイン料理に関する本の中では古参になるでしょうが、スペイン料理の魅力が満載された一冊です。
印象深かったのはスペイン人たちが魚介類をよく食べることでした。(ポルトガル人たちも同様らしい) 。イワシの網焼きや魚介類のスープ、茹でタコにスパイスを振ったつまみなどが紹介されています。イワシを愛するところなど、意外と日本に近い食の感覚があることがうかがええます。東氏の文章を読むと氏が食べることに並々ならぬ情熱を持っている人だ、ということがわかり、それも本書の魅力となっています。
「・・・マドリッドの<メゾン・デ・チャンピニョーン>の、大きな白いマッシュルームの鉄板焼もいい。笠を裏返したところに、生ハムやアンチョビーやらがのっていて、オリーブ・オイルをこぼさないように、二本の爪楊枝をさして熱いうちに口に運ぶ・・・。
セビーヤの旧市街のバル<ラス・ムリチャス>で食べた、明らかに鱈子の煮付けとしか思えなかったのもよかったし、カルモナの城壁内のバル<ゴヤ>で食べた牛の内臓の煮物「MENUDO DE TERNERA」もすこぶる良かった。サン・セバスチャンのバル<ラ・セパ>での蟹の爪のフライもいいし、<ギャラハー>で食べた茹でハム「ラコン」も最高だった・・・・」(「スペインは味な国」〜「朝バル夕バル」〜より)
それともう一つ、本書の味は紀行ものになっている点です。カタルーニャやアンダルシア、マドリッドなど各地に足を運び、土地土地の名物を味わい、紹介していることです。近年、日本の寿司が世界で広まったおかげで築地市場などへの本場詣でも行われているようです。しかし、日本にも津々浦々、さまざまな料理があり、外国でもこのような本が出てくれることを願っています。
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