2011年11月23日12時11分掲載
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経済
ユーロ圏の財政危機とTPP問題 落合栄一郎
ユーロ圏のスペイン、イタリアなどでの財政危機、特にギリシャのそれが、ユーロ圏ばかりでなく、世界の経済に不安定材料を提供している。先にも報告した(日刊ベリタ2011.10.21)ように、この危機は、世界的大金融企業による放漫施策が生み出したものであり、その失策を救済するためのユーロ圏の財政援助であり、その失策の被害を受ける民衆救済ではない。これは、2008年のいわゆるリーマンショックの米政府による金融企業の国税(庶民の懐から出た)による救済と同様である。
その上に、ギリシャのような経済弱体国が、ユーロ圏という共同体のなかで、強大国(ドイツ、フランスなど)の経済に圧迫されてさらに弱体化した結果でもある。ドイツからギリシャへの武器輸出は増大し、消費物資の輸出も増大しているそうである。
こうした経済共同体は、強国に好都合に出来ていて、弱体国は、さらに弱体化されるようになっている。しかも、強国での利点は、経済を牛耳るエリートを富ませるが、庶民への還元は少ない。それは、このような機構の根本が、いわゆる資本主義の「新自由主義」に基づいているからである。このような仕組みは、世界的レベルではWTOで代表され、地域的にはユーロ圏、北米ではNAFTAなどがすでに形成されている。このような動きは経済強国によって促進され、域内での自由化による弱小国の輸出促進などが喧伝されるが、実情は強国の支配増大を促す結果になることが多い。そうでない場合は、中国のWTO加入による中国経済の更なる成長に象徴されるが、これは、安い労働力と、その不満を抑圧できる政治形態という二つの要因で成り立っている。
さて、環太平洋のTPPであるが、これが上に述べた経済共同体の一般的傾向の例外であるはずがない。これは、経済の自由化/自由競争は、強者が弱者を駆逐するという競争原理に起因する。そして、現在の、各国内での経済格差、国際間の経済格差の更なる増大を導くであろう。
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