2011年11月29日12時25分掲載  無料記事
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米国

米国のリビア介入論争〜オバマ大統領を訴えた米議員たち〜

  今年のリビアに対するNATO軍の介入は英仏主導と言われていた。しかし、カダフィの最期につながったコンボイの空爆には米機が参加していたとTBSの報道番組で伝えられた。米国はリビア作戦にどう参戦したのだろうか? 
 
  アメリカのNPOによる放送「デモクラシー・ナウ!」には米国のリビア軍事介入をめぐる米議員たちの動きが取り上げられている。以下のアドレスによる同放送には和訳が付されている。 
http://democracynow.jp/video/20110616-2 
  「米国の大統領は、米軍の最高司令官です。戦争を遂行する指揮権は大統領のものですが、宣戦布告は議会の権限です。しかし、この憲法上の規定も、迅速な決断を必要とする近代戦争では実情にあわなくなっており、議会による宣戦布告を待たずに大統領が軍事行動を開始することが慣例になっています。でもベトナム戦争では、なし崩し的に戦争が拡大していきました。その反省から1973年に、大統領の指揮権に制約を加える「戦争権限法」ができました。開戦の前に議会に説明する努力を払うこと、事後48時間以内に議会に報告する義務、60日以内に議会から承認を取り付ける必要などを定めています。」(「デモクラシー・ナウ!」) 
 
  いかなる緊急事態においても、米国の戦争権限法によれば大統領には戦争開始から60日以内に議会から承認を取り付ける必要が課せられているという。しかし・・・ 
 
  「今年6月、米国下院で超党派の議員10人がオバマ大統領を戦争権限法違反で提訴しました。リビアへの介入が議会の承認のないまま60日を過ぎたからです。米政府はこれに対し長文の報告書を作成し、リビア介入は戦争権限法のいう戦争にはあたらないと弁明しました。「リビアでは敵との交戦も、恒常的な戦闘もなく」、「地上軍も展開していない」からです。リビアでの軍事行動の合法性をめぐって、提訴に加わったオハイオ州選出の民主党デニス・クシニッチ下院議員と、レーガン政権で法務官として活動し、戦争権限法に批判的なロバート・ターナー氏の論争をお届けします。」(同上) 
 
  今回、オバマ大統領を訴えた議員たちは超党派だという。オバマ大統領を提訴した10人の議員の一人、クシニッチ議員(オハイオ州選出・民主党下院議員)によればたとえ国連安保理やNATOの承認があったとしても、米国の憲法を無視することは許されないとするものである。これはますます国境を失いつつある今の世界ともかかわるテーマである。 
 
  クシニッチ議員は宣戦布告の権限は米憲法第一条8項によれば議会にゆだねられている。その趣旨は権限を議会にゆだねることで大統領の権力にチェックを働かせることにある。その三権分立という民主主義のシステムが侵されていると抗議している。しかし、大統領府はこれは「戦争」ではないと抗議の矛先をかわそうとした。 
 
  クシニッチ議員はリビア作戦に従事したNATO軍の役割を報じた英紙ガーディアンの記事をもとにこう語る。リビア介入に参加した約13000人のうち8500人が米国人であること。戦闘機の半分は米軍機であること。6000回近い空爆の3分の1が米軍の出撃であること。発射された巡航ミサイル246発の9割は米軍のものであること。これらは2011年5月5日付の数字であるという。 
 
  このデータが確かならリビア介入が英仏軍主導だったという報道は正確とは言い難いことになる。この放送の頃、ホワイトハウス報道官はリビアから撤退するような米軍はないと発表していた。 
 
■「デモクラシー・ナウ!」 
 
  「「デモクラシー・ナウ!」の司会を務めるエイミー・グッドマンは1985年、5つの局からなる独立系全米ラジオ・ネットワーク「パシフィカ」のニューヨーク局WBAIでジャーナリストとしてのキャリアをスタートし、「WBAIイブニング・ニュース」の制作に10年間携わりました。・・・・」http://democracynow.jp/about/history 


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