2012年02月03日15時28分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201202031528525

核・原子力

【たんぽぽ舎発】汚染者負担の原則は東電を許さない (1)毒物まいて「無主物」という東電の主張   槌田敦

  2011年8月、二本松市にあるゴルフ場が、東電に汚染の除去を求めて仮処分裁判を起こしたが、東電は、「原発から飛び散った放射性物質は、東電の所有物ではなく無主物であり、東電は除染に責任をもたない」と回答した。東京地裁の決定は敗訴であった。 裁判所は「無主物」には立ち入らなかったが、もしも裁判所が「無主物」との東電の主張に与することになれば、これまでの公害裁判の歴史は一挙に否定されることになる。 
 
【汚染者負担の原則PPP】 
 OECD(経済協力開発機構)は、1972年、公害対策に出費した企業と公害対策をしないで費用を節約した企業の不公平を解決するため、汚染者が汚染により生ずる費用を支払うという原則(poluter-pays principle PPP)を勧告した。 
 
 1969年に水俣病患者はチッソを被告として第一次訴訟を起こしていたが、この「汚染者負担の原則」を掲げて勝訴することになる。 日本では、この原則を、企業と企業の関係だけではなくて、被害者と加害者の関係にも適用し、「汚染原因者の負担」という意味で多くの公害裁判で使われることになった。汚染による損害の「支払い」だけではなく、支払いを含む広義の「負担」をする原則である。 
 
 今回の福島第一原発事故による災害についても、この汚染者負担の原則により、解決が進められることになる。 
 
「汚染者負担の原則」は、具体的には、刑法と民法の適用で実施される。刑法204、205条(致死傷罪)に加えて、刑法第211①条(業務上過失致死傷罪)が規定されている。また、民法709条(故意または過失による損害賠償責任)、710条(財産以外の損害賠償)が規定されている。この条項によって精神的苦痛に対する慰謝料の請求が可能となる。(以下、次号に続く) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。