2012年02月05日13時01分掲載
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中国
【中国経済開発・ある断面】高効率農業と農的生活のはざまで(中)「和諧社会」とその現実 安藤丈将
重慶市の経済改革には、見逃してはならないもうひとつの顔がある。それは、単に市としての経済成長を追求するだけでなく、「バランスのとれた増収」をめざすという側面である。すなわち、人びとの暮らしの改善に目を向け、成長の果実をいかに分配するかというのが、重慶モデルのポイントである。
垫江県県政府の担当者は、ツアーの参加者との対談の中で、「人民の基本的なニーズ」を満たすことの必要性を強調した。このニーズとして彼が挙げたのは、「道路、収入、社会保障、飲料水、文化活動」の五つであった。そして彼の言葉には、自分たちがそのニーズを把握できているという自信で満ちていた。
いったい、この自信は、どこからくるのだろうか。政府の担当者たちは、自分たちが住民のニーズを知るために、多くの時間とエネルギーをかけていることを強調した。私が彼らから聞いたのは、無作為に住民に電話して、人びとの抱えている問題に関する情報を入手するという方法である。他にも、担当者が貧しい農民の家を訪問し、一緒に食事をし、一緒に暮らし、一緒に働くという活動は、「三項活動」と呼ばれ、推奨されている。
このように、重慶市政府だけでなく中国全体で格差問題がクローズアップされる中、胡錦濤政権は、「和諧社会」というスローガンのもとに、分配政策の重要性を強調している。だがこの分配政策は、必ずしもうまくいっているとは言えない。ひとつの問題は、開発のスピードにニーズの供給が追いついていないことである。今では中国国内の労働争議の発生は、日常茶飯事になっている。
たとえば、これは重慶市ではないが、同じく西南部に位置する四川省の州都の成都市では、最近、大きな労働争議が起きた。二〇一二年一月四日に、攀鋼集団有限公司という国有企業の傘下にある「成都バナジウム鋼公司」の五千人もの労働者が賃上げを求めてストライキを行なったのである。成都市では、昨年の一二月三〇日に国有企業「川化グループ」の労働者がストライキとデモを行ったばかりであった。バナジウム鋼公司のストライキの参加者は膨れ上がっていったが、結局、一月七日に三千人の警官隊が催涙弾などを使って、ストライキを強制的に制圧した 。
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