2012年02月16日23時07分掲載
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文化
現代の遊牧民〜「モダン・ノマドの日記 2」 アンドレイ・モロビッチ
■デインジャー・オマル
デインジャー(’危険’)は砂漠の真ん中にスキー用品店を開いている。シベリアの凍土地帯にではない。サハラ砂漠にだ。ここでデインジャーはスキー板やスキー靴を売っている。滑降、ターン、ジャンプすべての用途に答えるスキー用品がそろっている。
デインジャーは奴が若い頃名付けられたあだ名だ。その頃はよくキレたし、口論を好んだそうだ。今では結婚しているし、子供も何人かできて、知恵も豊かになった。
デインジャーの店にはとても不思議な物がある。たとえばワイマール共和国時代に使われた圧力計もその1つだ。カメレオンの干物もある。フラニ族のナイフもある。そうかと思ったら、ゲーテの「ファウスト」のポーランド語版もある。レオパルドのOSをインストールするためのCDもある。これはナイジェリア製だ。
デインジャーの店にはあらゆる男女が集まってくる。扉にはノックをするための金具はない。デインジャーのお転婆の親戚たちや知人たちは試験に落第して隠れにやってくるし、夫の候補者を探しにくることもある。要求の多い妻から逃げてくる男もいれば、嫉妬深いボーイフレンドから逃げてくる娘もいる。雇い主の目を盗んで油を売りに来る者や、日中の猛暑を避けてやってくる中年太りの奥さんもいる。
デインジャーのスキー用品店は人生の逃亡所であり、エキゾチックな隠れ場だ。それだけじゃない。デインジャーはどんな行事でもお値うち価格で実現させられるんだ。結婚式の披露宴からクリケット大会までだ。なんといったってデインジャーの母方の叔父はニジェール北部アガデス州のスルタン(君主)だったというんだ。
デインジャーは携帯電話を3つ持っているし、USBもたくさん持っている。コネクションは無数にある。デインジャーの前にドアは開かれているのだ。デインジャーは、しかし、スキー用品店にとぐろを巻いている方を好む。たとえ土地がなかったとしても、このスキー用品店は彼の王国だから。
注)フラニ族=フラ族ともいう。
注)アガデス=Agadez(ニジェール北部にある州)
寄稿 アンドレイ・モロビッチ
翻訳 プリモス・トロベフセク(スロべニア語→英語)
翻訳 村上良太 (英語→日本語)
■現代の遊牧民〜「モダン・ノマドの日記1」http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201201150322290
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