2012年03月05日19時19分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201203051919441
エリザベス女王が即位60年 その生涯を振り返る
英エリザベス女王が、2月6日、即位から60周年を迎えた。英国の君主としてはビクトリア女王に次ぐ長い統治となる。父親ジョージ6世の急逝により、25歳で女王に即位した。6月上旬には即位60周年を祝う記念式典が開催され、さまざまなイベントが目白押しだ。女王の半生を振り返ってみたい。(ロンドン=小林恭子)
英国の邦字週刊誌「英国ニュースダイジェスト」最新号に女王の半生とその時代について書いている。以下はそれに補足したものである。
エリザベス女王(85歳)は、1926年4月、ヨーク公夫妻(国王ジョージ5世の次男となる父アルバートと母エリザベス)の長女として、ロンドン・メイフェアーで生まれた。エリザベスは王位継承順位では第3位であった。父の兄にあたるエドワードが継承順位では第1位で、その後を継ぐのはエドワードの子供たちと考えられていたため、エリザベスが将来女王になるだろうと思う人はほとんどいなかった。
4歳になると、妹のマーガレットが誕生した。家族の絆は強く、エリザベスは幸福な少女時代を過ごしたといわれている。
1936年、ジョージ5世死去後、エドワードが国王エドワード8世として即位したが、その時代は1年も続かなかった。離婚経験がある米国人女性ウォリス・シンプソンと交際していたエドワードは、離婚女性と国王との結婚が許されないことを知って、王位を捨てる方を選択したからだ。
そこでエリザベスの父アルバートがジョージ6世として即位し、その統治は1952年まで続いた。健康が悪化していた父の代わりに、夫のフィリップとともに外国を訪問中だったエリザベスは、同年2月6日、父が亡くなったことをケニアで知った。
女王として英国に急きょ帰国したエリザベスを、当時の首相ウィンストン・チャーチルが飛行場で出迎えた。25歳という若くかつ美しい女王の誕生に、国民中が湧いたという。戴冠式は翌1953年。その模様がテレビで放映されると、国内外の視聴者は画面に釘付けとなった。女王は国民のアイドルになっていた。
―変わる英国とともに60年
エリザベス女王の統治の当初は、ちょうど大英帝国が解体しつつある頃であった。
インド、パキスタンの両国が独立したのは1940年代だったが、その後もかつての植民地国の独立が相次いだ。元植民地国を中心とした各国は1931年に英連邦としてまとまり、現在までに54カ国が加盟。人口は約18億人で、これは世界の人口の約三分の1にあたる。女王は英連邦の元首である。
また、英国教会の首長という役割も持つ。国を代表して外国からゲストを迎えるとともに、議会を開会するのも女王の重要な役目だ。英国を代表する「顔」ともいえよう。
複数の世論調査では王室の存続を支持する人が過半数を占め、エリザベス女王の人気も高いが、その影響に影が見えたことが、一時あった。
長男チャールズ皇太子と結婚したダイアナ妃が不仲となり、1980年代から90年代にかけて、夫婦の不倫関係などのゴシップ記事がメディアで連日報道された。夫妻は1996年に正式離婚したが、翌年、ダイアナ妃がパリで交通事故で亡くなった。
多くの国民がダイアナ妃を慕い、女王から何らかの追悼の言葉を欲していたが、事故死から数日間、女王一家はスコットランドにある避暑用住居バルモラル宮殿にこもり続けた。これが国民の大きな反感を買った。
後、女王はロンドンに戻り、国民がダイアナ妃にささげた追悼のカードや山のような花を見て、その死が国民にもたらした悲しみと衝撃の深さを知った。女王はテレビに出演し、ダイアナ妃の突然の死をいたむメッセージを送り、国民の怒りは氷解していった。
エリザベス女王の側近らの話によれば、女王は恥ずかしがり屋で、人間よりも動物に話しかけるほうが楽と考えるタイプだという。女王の犬好きや競馬好きはよく知られている。
派手なことを嫌い、「名声にも興味がない」(ウィリアム王子)女王は、その一生を女王としての役割を全うするために生きてきた。叔父のエドワードが王位を放棄したことへの衝撃と、「絶対に自分はそんなことをしない」という強い思いが、女王の日々の活動の糧になっていると、女王の伝記を書いた作家ロバート・レーシーは述べる(『ロイヤル』)。
移民出身の国民が全人口の10%を占め、キリスト教以外の信者も増えている。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドではそれぞれ独自の地方議会が成立した。英王室は分権化、多様化が進む英国を、ゆるやかに1つにまとめる、象徴的な存在だ。即位60周年記念は、さまざまなイベントに参加することで英国に住む隣人との一体感を感じたり、英国のここ数十年の変化を振り返る機会となりそうだ。(ブログ「英国メディア・ウオッチ」より)
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。