2012年03月20日21時32分掲載  無料記事
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アフリカ

現代の遊牧民 「モダン・ノマドの日記 6」 アンドレイ・モロビッチ

  タンバラは美容院を経営している。わずか21歳に過ぎないが、すでに自立しており、誰の指図も受けない。タンバラにはボーイフレンドがいて、間もなく結婚する予定だが、それは彼が過ちを犯さなかった場合に限る。 
 
  タンバラはこの国ニジェールの南部から移住してきた女性だが、あらゆる点で突出しており、輝いている。たとえば美容院を作るための資本も自力で集めた。巧みな商売によってだ。もちろん、若干は父親が工面してくれた。タンバラの父親は彼女のライフスタイルにあまりシンパシーを感じていないにも関わらずだ。タンバラは自分の生活を変えようとはしなかった。好きなのはラップと自由だ。 
 
  タンバラには2人のアシスタントがいるだけだ。タンバラには彼女たちに十分給料を払えない。だが、アシスタントの女性たちにとっては家で時間をつぶしたり、夫達の下着を洗濯したりするよりもこの美容院で働く方がいいのだ。 
 
  タンバラの美の神殿はまた同時に社交の場でもある。同じ考え方の娘たちが集まるリビングルームなのだ。もちろん、男の子たちも入ってきてよい。もっとも、きちんとふるまえばだが。パーラーではモダンミュージックが流れている。客たちは踊ったり、コーヒーや茶を飲んだりする。喫煙と飲酒はここでは歓迎されない。空気は打ち解けている。しかし、いたずらやわいせつなふるまいはない。タンバラは線の引きどころを心得ているのだ。だからこそ、年寄りたちや保守的な人々が投げかける冷ややかな眼差しにもタンバラが動じることはない。 
 
  人生は続いていく。預言者がミスワクの小枝で歯をこすっていたからといって、いったいなぜ歯ブラシと歯磨き粉のある時代に、預言者と同じ歯の磨き方をしなければならないものか?実業家たちから賄賂や特殊な税を求めてまわる警察官やその他の行政官たちがタンバラの美容院にだけは立ち入ることができないというのは見事というほかない。彼らはタンバラの店にはつけいる隙を見つけることができないのだ。彼らにこの若い娘をいためつける勇気があるものか? 
 
  タンバラは若者たちが自由に経験を話し合うための場を意図せず作り出していた。そこには本も教師もないが、まぎれもなく人生という名の学校である。たとえばタンバラの友達のディナはフランス人と結婚したが、別れることになった。彼はハンサムでアガデス州では親切な方だった。しかし、フランスに行ってみるとまったく別人に変わりディナをひどく扱った。もし、また欧州から来た男と出会ったとしても、二度とピンナップガールのように品を作ることはないだろうし、自分を大切にするだろう。いつか彼女は欧州に旅をして本当の欧州を知ることができるだろうし、欧州人もまたまったく同じプロセスを経て本当のアフリカについて知ることができるようになるのだ。 
 
寄稿 アンドレイ・モロビッチ 
翻訳 プリモス・トロベフセク(スロべニア語→英語) 
翻訳 村上良太 (英語→日本語) 


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