2012年04月04日00時53分掲載  無料記事
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コラム

突風に吹かれて    村上良太

  3日午後、首都圏もまた激しい突風に襲われた。偶然、その時間に千葉にいた筆者は東京行きのJR電車が突風でストップしてしまいまったく車内で動きがとれなくなってしまった。アナウンスはこう告げた。 
 
  「運行の見込みはまったくたっていません」 
 
 駅に止まったまま動かない電車の中で、立っていた客の一人が同僚にこう言った。 
 
  「いったい何が来ているんですかね?」 
 
  駅に止まった電車の扉からも雨混じりの風が吹き込んでくる。春の番狂わせな突風は人々の1日にささやかな変化を与えたようだった。午後6時、筆者の向かいの座席に座っていた50〜60代の二人組の女性客は動きが速かった。 
 
  「息子からさっき電話が来たけど、午後9時まで電車は動かないだろうって言っていたわ。だったら、食事でもしていかない?あわてて早く帰ることもないんだから」 
 
  彼女はダイヤの大幅な乱れを逆手にとって美味しいものを食べて3時間の余暇を楽しもうと腹をくくったのだった。もう一人の女性が携帯で電話をかけた。千葉駅周辺の料理店の空き状況を問い合わせているのである。二人はさっそく電車を降りた。 
 
  この日、千葉駅では多くの乗客が列を作って払い戻しを受けていた。だが、隣の京成電鉄もまたダイヤが乱れ始めたと聞いた。思いがけず突風の力を感じさせられた。もしかするとホテルでもとった方がいいのだろうか? 
 
  その後、午後9時ころになると、列車はゆっくりと止まり止まりだったが、再び動き始めた。アナウンスによると、突風が最も脅威になっているのは荒川にかかる鉄橋の地点だそうである。ここを風速25メートルの強風が襲っているため、横転を避けるためなのだろう、JRの電車は橋を渡らない方針だった。したがって三鷹行きの総武線電車も目的地を西船橋に変更したのである。東京へ行く人は地下鉄東西線に乗り換えてください、とアナウンスが告げた。 
 
  筆者の前に現れた60代と思しき3人の女性客は会食を終えて帰宅するところだった。話から百貨店の婦人服売り場で働いているようである。そのせいか、3人とも服装がおそろいで、黒のコートに黒のパンツ、そして首に白と青のスカーフをしている。丁度春の研修期間のようである。 
 
  「試験が○×じゃなくて書かなくてはいけないのよ。漢字が間違っていたら×だって。だったら、全部ひらがなで書こうかしら。だって、うろ覚えってことがあるじゃない?」 
 
  研修の試験で65点以下なら追試を受けなくてはならないようである。 
 
  「まさか、3回も試験を受けさせられるとは思わなかった」 
 
  百貨店の3人の店員の女性たちは毎日、定刻に出勤して定時に帰宅するのだろうか。しかし、今日は会食の後、予想外の突風に襲われ、帰宅時間も遅くなった。電車が前の駅、その前の駅に止まっているので、1駅進んでは止まり、また一駅進んでは止まり・・・を繰り返していたのである。 
 
  「帰ったら11時、寝る時間だわ。お風呂に入って寝たら12時・・・」 
 
  突風のおかげで1時間睡眠時間が短くなるようだ。春の突風は人々の暮らしをかき混ぜることになった。 
 
■<強風>列島大荒れ、死者3人、302人負傷http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120403-00000093-mai-soci 
■強風の原因は「爆弾低気圧」 
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120403/dst12040318570027-n1.htm 


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