2012年05月10日09時14分掲載
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反戦・平和
東京大空襲訴訟、原告団が最高裁に上告 控訴審の「棄却判決」に不服
5月7日、東京大空襲訴訟*原告団79名が、4月25日に出された控訴審の「棄却判決」を不服として最高裁に上告した。上告後、国会議員会館で、高裁判決と立法化についての院内集会が行われ、立法化に向けての意気込みを確認した。(加藤〈karibu〉宣子)
控訴審は6回の法廷にわたって審議され、4月25日に出された控訴審(鈴木健太裁判長)判決は「棄却、費用負担は原告持ち」のみを言い渡し、判決理由も読み上げられることなく1分で閉廷した。内容は一審をほぼ踏襲し、計52兆円以上の手厚い恩給が支払われている旧軍人・軍属との補償の差について「不公平感は心情的には理解できる」としながらも、戦争被害者が数多く存在することから「合理的な理由なく差別されていることは困難」とした。
原告団長の星野弘さんは「控訴審判決は、かなり悪い判決だ。前向きの判決は一審判決を引用しているだけで、前進したところはほとんどない。一言で言えば、原告の憤りはすごいものがある。最初は、最高裁への上告は20名程度の代表者で闘おうと思っていたが、(5月1日段階で)上告希望者は79名となり、裁判費用の印紙代もどんどん振り込まれている。」と話した。
院内集会では、原告団長、中山武敏弁護団長の挨拶の後、黒岩哲彦弁護団事務局長より、判決に関する詳しい報告があった。不当な点として、「特別犠牲を強いられない権利」の否定、差別されない権利(憲法14条)の否定などが挙げられるとした。一審地裁判決の到達点を維持できた点として、「被害者の心情を理解」するとした点、国会が解決すべき問題とした点、国家の同義的責務を認めた点、「戦争受忍論*」の明示的な言及がなかった点を挙げた。また最高裁では「受忍論」の最高裁判例を克服することを目標としていると述べた。
その後、議員連盟会長の首藤信彦衆議院議員、事務局長の高井崇志衆議院議員ほか4名の議員が、立法府に責任があることや立法化に向けての意気込みを話した。議員連盟に賛同する議員の数は44名となっている。今国会の会期末6月21日まで、残された時間が少ない中でいかに救済の金額や財源確保を行なっていくか問題は山積みだが、被災者が高齢になっていくなか、早急な救済が求められる。
*東京大空襲訴訟控訴審判決
http://www.geocities.jp/jisedainitakusu/kousosin-7-.html
*東京大空襲訴訟
1945年3月10日の東京大空襲の被災者と遺族が国に謝罪と損害賠償を求め、2007年3月東京地方裁判所に提訴した。原告は全国から131名、賠償金額は一人あたり1100万円、訴訟費用なども含めて総額14億4100万円。国の責任として「外交保護義務違反」「被害者を救済せず、放置した責任」をあげている。一審で棄却となり、2009年12月東京高等裁判所に控訴していた。
*戦争受忍論
「受忍」とは、1976年提訴の名古屋空襲の裁判(原告3名)及び79年の遺族による東京空襲の裁判をめぐり、「国の存亡に関わる非常事態のもとでは、国民のひとしく受忍(我慢する)しなければならないところ」として原告敗訴を申し渡した最高裁判決の用語。
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