2012年05月17日09時23分掲載
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『原爆と原発―放射能は生命と相容れない』
表題の小冊子(表紙は下に)が出版された(落合栄一郎著、鹿砦社,2012年5月、762円)。これは、著者が、昨年バンクーバーで行った講演に基づいている。聴衆は日本人ばかりでなく、大部分はカナダ人であったので、日本で常識になっているような事柄も、概要を説明したので、これ1冊で、「原爆と原発」問題の概要が掴めるように配慮されている。しかし、この本の主題は、「放射線というものが、いかに危険なものか、どうして危険なのか」という点に関して、科学的・原理的に考えてみるということにあり、現在様々な仕方で行われている放射線による人体の健康への影響を根本的に見直してみた。そして導かれた結論が、「放射線は本来生命とは相容れない」ということである。(落合栄一郎)
現在福島原発の事故は収拾とはほど遠く、事故の現状ですら、ほとんど把握されていない。破壊が凄まじく、高い放射線量のため、人間が近づくことも難しく、調査は、精査をするには不完全なロボット頼りである。なんとかこのような現状を少しでも改善しようという努力はなされているようであり、それに携わる労働者に放射線被害がすでに起っており、死者もでている。また4号機は、現在も非常に危険な状態にあり、強い余震で、壊滅的な放射性物質放出を招きかねない。
このような現状にもかかわらず、政府は終息宣言を出し、充分に科学的、技術的な検討もせずに大飯原発の再稼働を画策している。原発なしでも、充分に電力需要に応えられる事実には目を塞ぎ、電力不足を喧伝している。
一方、福島地元での避難区域の縮小などを政府が進める一方、放射能被害と考えられる様々な健康障害が、地元住民ばかりでなく、関東地方でも発生しているにも拘らず、そのような事実には政府は目をつぶっているし、したがって、組織的な充分な健康調査も行われていない。また、そもそもこの原因を作った企業に対する刑事責任の追求のかまえすらない。
こうした政治経済的、医療的側面は、日本国政府の政治姿勢が根本問題であるが、その前に、原発にしろ、原爆にしろ、根本的に生命(人間を含めた全ての動植物)とは、相容れないということを、この本では科学的見地から議論している。ということは、原爆も原発も、いのちを破壊するものであって、日本国とか,東電とかいうレベル以上の、全人類の問題である。原爆はいうに及ばず、原発を維持、開発を進めていけば、地球上の全生命にその破壊力がおよび、大げさに言えば、生命を持つ、このすばらしい地球という天体を生命が住めないものにしてしまう可能性がある。現在ある核兵器、原発を今すぐに廃棄しても、それに含まれる放射性廃棄物を生命に悪影響を与えないように処理するのは、非常に困難である。
こんなものを人類が作り出してしまったのは、非常に残念なことであるが、今、この機会に少なくとも日本の原発は全廃し、原爆の被害者の立場も含めて、地球上からの原爆と原発の廃棄に、日本は指導的役割を果たせるであろう。こうしてこそ、原爆と原発の犠牲者に報いることができる。
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