2012年06月06日02時32分掲載
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欧州
コペンハーゲンの自転車 村上良太
コペンハーゲンを旅した人であれば、必ず印象深く思うのが自転車乗りだろう。町をぼんやり歩いていると、あわよくば自転車にはねられかねない。快速で自転車が二台、三台、いや数十台単位でビューンと脇を走り抜けていく。
コペンハーゲンは自転車の町なのである。実際、車道とは別に自転車専用道路があり、先ほどの自転車もそのレーンを走っているのである。北欧は風力発電にも力を入れているし、自転車通勤をすることで地球環境問題に率先して取り組んでいるのだ、と思ったものだ。
ところが偶然、チェコの作家カレル・チャペックによる旅行記「北欧の旅」を手にして、こんな描写に出会った。
「コペンハーゲンと言えば、まずコペンハーゲン陶器が連想される。しかし、この地には注意すべきものが他にも数多くある。特にー
1、自転車乗りの男女。ここにはオランダに負けないほど多くの自転車乗りがおり、全員が一団となるか1つの流れとなるか、多かれ少なかれまとまった組になって、町の通りをびゅんびゅん走っている。自転車はすでに交通機関を超えた存在であり、ここでは、地・風・水・火と並ぶ元素となっているのだ」(コペンハーゲン)
チャペックと言えば没したのが1938年である。そう、第二次大戦前夜なのだ。ということはコペンハーゲンが自転車の町になったのは戦前のことで、昨今の地球温暖化問題などとは別のところで自転車文化がすでに確立されていたのだ。そして、ひとたび、すぐ脇を駆け抜けていく自転車族を体感したら、きっとチャペックの描写「ここでは、(自転車が)地・風・火・水と並ぶ元素・・・」にうなづけるはずである。
■「北欧の旅」(ちくま文庫、飯島周編訳)
■カレル・チャペック(1890−1938)
ジャーナリスト、小説家、エッセイスト、劇作家。
「R.U.R」(ロボットが人間に対して反抗する戯曲で、この手のSF物の走りである)、SF「山椒魚戦争」、愛する子犬との触れ合いの記録「ダーシェンカ」など。ナチスに抵抗し、全体主義と闘った。(「北欧の旅」を参照)
チャペックには「北欧の旅」以外にも、さまざまな旅行記がある。
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