2012年07月26日00時18分掲載
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遺伝子組み換え/ゲノム編集
【世界を揺るがす遺伝子組み換え】(1)南米の大豆生産拡大の足元で起こっていること 印鑰 智哉
アルゼンチンでショッキングなテレビ番組が報道された。ベトナム戦争の枯れ葉剤を思わせるような農薬被害が報告されたのだ。ガン、白血病、糖尿病、腎炎、 出生異常、皮膚病、呼吸器障害、その広がりはアルゼンチン社会に大きなショックを与えた。
◆広がる農薬被害
アルゼンチンばかりではない。
この現象は遺伝子組み換え大豆の耕作が急速に増え、モンサントの開発した農薬ラウンドアップの使用の激増したことによって引き起こされた。広大な地域で有害な成分を含む農薬が空中散布され、住民が農薬を浴び、死亡したり、深刻な病に陥る事件が続出した。
大豆生産の激増で起きているのは農薬被害に留まらない。南米はもともと植民地の遺制でもある巨大地主による土地の独占が残っており、農地改革の不可避な地域であったが、その農地改革とはまったく正反対のこと、つまり農地の少数大地主へのさらなる集中という事態をもたらした。
◆土地から引き剥がされる小農民
人口が640万人という小国のパラグアイで毎年10万人の小農民、先住民族が農地を失って、スラム住民になっているという報告がある。アルゼンチンではかつては統計的に存在していなかった飢餓層が生み出されてしまったという。
この大豆生産は主として国外で使われる家畜の餌やバイオ燃料の原料となる。つまり、人間が食べるものではない。アルゼンチンでは6割近い農地が大豆生産に 独占される状況になっているという。食料を生産しなくなった地域では食料は他の地域から輸入しなければならない。その食料を購入できない社会階層は飢餓層 となってしまわざるをえない。
なぜ、このような事態が南米で起きているのだろうか?
その原因の一つは狂牛病である。90年代の狂牛病の 発生に伴い、牛の飼料として肉骨粉ではなく、植物性の飼料が求められた。大豆は単位面積当たり最大のタンパク質を生産する穀物であり、それゆえ石油に並び 称される戦略物資でもある。そして近年は石油枯渇とCO2削減のためにバイオ燃料の原料としても大豆が注目を浴びるようになった。
植えれば植えるほど金になる作物、大豆。1990年代後半以降から南米での大豆生産は激増し、2020年には世界の6割近くが南米で生産されるようになると予測されている。広大な地域をたった1つの作物だけが支配する巨大なモノカルチャーが拡大し続けている。
(つづく)
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