2012年08月05日15時35分掲載
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社会
【運動の現場で考えたこと】(4)ファシズム政治 園良太
繰り返しているように、野田政権は原発だけでなく自民党ですらできなかったようなあらゆる悪政を行っています。その手法も「ファシズム政治」そのものです。そしてその方向性と手法が、大阪に代表される地方議会、地方自治体にまで貫徹されてきたほどに、私たちの全社会を覆ってきたのです。
もともと民主党は沖縄の普天間基地の県外移設を始め、次々と公約を破り自民党化していました。東アジアにおける米国とグローバル経済下の財界の力は政権より強いからです。加えて米国は世界金融恐慌と空前の財政赤字で日本にあらゆるカネを出せと要求するからです。日本の権力は小泉政権時代にこれまで支持基盤だった医師会や地方の土木団体を「抵抗勢力」と呼んで切り崩しました。その結果今の政権は、財界と都市富裕層しか基本的な支持基盤がありません。その結果米国と財界の要求は果てしなく強まり、この間の官邸への権限集中の結果官邸主導でホイホイ決めています。
国会は戦前と同じく95%以上を民主や自民の保守・軍事化・新自由主義政党で占められているため対立点は何もなく、茶番の論争を繰り返し、官邸の決定事項から私たちの目を遠ざける役割を果たしているだけです。このかんの原発再稼働は暴走の最もたるもので、野田が「国民の安全のために再稼働」などと究極の苦しい暴言を吐いたのはそれほど無茶を押し通しているからです。
増税と社会保障の一体改悪、派遣法の据え置き、TPP参加、秘密保全法やマイナンバー制度、死刑の増加、武器輸出の緩和、原子力大綱に「安保利用」と明記して核兵器開発へ道を開く、宇宙の軍事利用開始、果ては集団的自衛権のなど巨大な悪法が次々ごり押しされました。貧困、3・11後の混乱がそれを後押しする。原発、戦争、貧困、差別、弾圧の全問題で史上最悪の法案を通してきているのです。
さらに国政への不満の受け皿となっているのも橋本大阪市長、石原都知事、河村名古屋市長と独裁的に民営化を進める人物です。彼らは財界と富裕層の要望を民衆の要望だと錯覚させ、着実に実現させる手法だけが長けています。そのために労組や教職員を叩いて解体させようとしています。また戦争と愛国心を煽って人気を集める右翼手法でも共通しています。橋本は教育現場に日の丸・君が代を強制し、石原は尖閣列島を都が購入すると宣言し、河村は「南京大虐殺はなかった」と発言したからです。
自治体も国政と同じです。
それは今や最も身近な市区町村に浸透しています。政府は4月に朝鮮の人工衛星を「ミサイルが来る! 撃ち落とそう」と極限まで煽り、全国市区町村自治体と共有しましたが、拒否した所は皆無でした。さらに東京23区(世田谷除く)は7月16日、17日に自衛隊による区役所庁舎を使った訓練と市街地展開を認めてしまいました。また江東区や墨田区は渋谷区は、福祉の充実よりもスカイツリーやヒカリエの客を呼び込む再開発に突進しています。そのために警察と結託して公園や川沿いに住む野宿者を暴力排除し、僕はそれを江東区役所に抗議に行ったら不当逮捕・起訴されたのです。
このファシズム政治は、史上最悪の人災事故の責任と被害や死への恐怖心が闇の奥へ隠されることから強まりました。そしてこのまま行けば冷戦崩 壊後の全ての流動化が3・11を経て権力と資本の論理で上から下まで完全に統合されかねません。それを「がんばろう日本」と呼べば問題の解決策だと錯覚さ せられ、人びとは抗議ではなく自発的に協力してしまうようになります。戦前の破滅を無反省な日本で、再び破滅の道を選ぶなら、それは「復興ファシズム」と呼ぶべきものです。
このように政府が全ての問題で空前の悪政をしているからこそ、反原発もシングルイシューではなく他の課題とつながり総合的に闘っていかなければいけない。戦争や差別や貧困問題との連携は歓迎されるべき動きで、世界中の運動では必ずそうなるでしょう。今のオキュパイ運動でも多様な運動が全ての問題を主張しています。また官邸前抗議も反原発デモも常に「人数」が評価されます。でもそれは国会が「聞く耳」を持っている=代議制がある程度機能していることが前提です。でも今は「ファシズム政治」、社民党も共産党も極少数。官邸も国会も 「大きな音」としか扱わないで絶対に中身を聞かず、自分たちだけで動き続けることが絶対的特徴なのです。そして抗議行動に警察を使って巧妙に分断・沈静化します。
それと対抗するには人数や規模だけでは足りないし、警察に従って社会秩序を温存していては何も変わりません。激しい直接行動と永続する占拠行動 で、相手を真に震え上がらせることが必要なのです。そして議会を見限り、路上占拠した自分たちの中で新しい政治と世界を実践していくことが必要なのです。それが「99%vs1%」の意味であり、世界の抗議や革命の潮流です。
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