2012年08月22日14時24分掲載
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労働問題
インド人労働者ショボンさんの死 「これは外国人労働者使い捨ての典型例だ」
インド国籍労働者ショポンさんが亡くなった。ショボンさんは東京薪市場(運営会社 ハラカタヴァルト 代表 鈴木洋樹)で薪の配送業務を行ってたが、作業中の事故で重傷を追った。しかし雇い主は労災に入っていないということで放置、その挙句、働けないからと宿泊していた会社内から追い出すという仕打ちを重ねていた。ショボンさんは友人の紹介でAPFS労組に頼り、同労組の世話で労災や休業補償を勝ち取った矢先、無理がたたって病死した。同労組は8月19日、ショボンさんの組合葬をとり行うと同時に、警察(保護責任者遺棄)、労働基準監督署(労基法違反、労災法違反等)への告発を含め「社会的包囲網」路線で闘う方針を打ち出している。以下、APFS労組の訴えを紹介する。APFS労組は日本で働く外国人労働者と日本人労働者が作る個人加入のユニオンで、外国人労働者の人権を守ることをめざして活動している。(日刊ベリタ編集部)
以下、APFS労組の訴えから――
インド出身のショポンさんは東京薪市場(運営会社 ハラカタヴァルト 代表 鈴木洋樹)で薪の配送業務を行っていました。早朝5時から深夜まで、一日18時間も働いても日給6000円という劣悪な労働条件でした。
本年3月12日、薪置き場内でハシゴに上っての作業中、頭上から崩れてきた薪を避けようと飛び降りた際、左足が木片の上に着地してしまい左足踵骨折の傷を負ったショポンさんは、鈴木社長に病院へ連れて行ってほしい、と懇願しましたが「うちは労災保険に入ってないから」と社長はこれを無視。事故後6時間以上にわたり苦しむショポンさんを助手席に乗せたまま薪の配送を続けました。翌日、友人に連れられ病院へ行き治療を受けたものの、ショポンさんは社会保険にも国民健康保険にも加入していなかったため全額自費で支払わねばなりませんでした。病院では急いで手術を受けるよう指示されましたが、経済的に無理な話でした。ショポンさんは会社事務所に寝泊まりしていたため、ただひたすら安静にしているしか術はなかったのです。
ところが、一週間後、なんと鈴木社長は「もうお前は働けないな。すぐに出ていけ!」とショポンさんを放り出してしまったのです。困ったショポンさんは、友人の紹介でAPFS労働組合へ駆け込んできました。当組合は緊急性に鑑み、事業主証明空欄のまま直ぐに渋谷労働基準監督署労災課へ申請。「とりあえず」治療費だけは労災扱いとなりました。
しかし、時はすでに遅く、骨は変形したまま固まっていました。それどころか、長く放置していたため左足が壊死してしまっており腐った肉を取り除く緊急手術が必要、と診断されてしまいました。最悪、膝下からの切断も覚悟するように、と宣告されました。幸い、菌がそれほど深く入りこんでいなかったため、切断は免れましたが、左足はほとんど使えない事態となってしまいました。
退院後、ショポンさんは組合に仮住まいし、必要最低限の生活費を組合闘争資金でまかなう状態が続きました。東京薪市場は組合からの団交申入れも拒否し逃げまわりました。のみならず、労働基準監督署の事情聴取で「彼はときどき手伝いにきていただけ。雇用関係はなかった」などと虚偽を主張したのです!労基署は会社取引先や関係者の証言を集め、4か月後の8月1日、正式にショポンさんの「労働者性」すなわち東京薪市場で就労していた事実を認めました。これで労災休業補償も支給される、とショポンさんは大喜びをしました。組合も労働争議へ突入する準備を始めました。
ところが事態は一変します。8月7日、ショポンさんはかねてから訴えていた腹部の痛みに加え「嘔吐」「意識混濁」を起こして苦しみ始めました。重大な事態と判断した組合は救急車の出動を要請。ショポンさんは豊島病院へ搬送されました。結果はC型肝炎に起因する肝不全・多臓器不全というものでした。そして、苦しみぬいたショポンさんは翌8月8日午後6時55分、急逝したのでした・・・。
あまりの突然の事態に私たちは茫然としました。つい先月には組合主催「語学教室」のヒンドゥー語講師をしてくれ、常に他の組合員を励まし、冗談を言っていたショポンさんはもう帰ってこないのです!
ショポンさんのかけがえのない命を奪ったのは間違いなく東京薪市場・鈴木社長です。もし、東京薪市場が労災保険に加入していたら、いや少なくとも素直に雇用関係を認めていたならば休業補償はもっと早く支給されていたはずです。そうすれば体調が悪いのを我慢せず、病院で検査を受けることができたはずなのです。もっと生きながらえることができたはずなのです。
移住労働者を文字どおり使い捨て、左足の機能を奪い、あげく死に至らせた東京薪市場を許すことはできません。鈴木社長はショポンさんの死を知ってもなお「うちは関係ない」と吐き捨て逃亡を続けています。ショポンさんの悔しさ、怒りは私たちAPFS労働組合が引き継ぎます。
ショポンさんの組合葬が8月19日、組合事務所で行われました。組合員、関係者14名が別れを告げるために集いました。遺影の前には組合員手作りのカレーが供えられ、ささやかながら心のこもったお別れ会ができたと思います。黙禱から始まり、組合執行部による「経過報 告」、山口執行委員長の弔辞、参加者全員の献花、ビルマ国籍ティンマウンニョ書記長による献杯の後、参加者がそれぞれショポンさんの思い出を語りました。
その後、組合執行部より闘争方針が提起され、満場一致でこれを確認しました。以下のとおりです
(1)ショポンさんは亡くなってもなお私達の仲間であり、彼を苦しめ死に追いやった東京薪市場を決して許さない。鈴木社長の心からの謝罪を求める。そのために、警察(保護責任者遺棄)、労働基準監督署(労基法違反、労災法違反等)への告発を含め「社会的包囲網」路線で闘う。
(2)ショポンさんは以前日本人女性との結婚歴があり、実子が名古屋に住んでいるとの情報が寄せられている。なんとしても遺族を見つけ出し、ショポンさんが亡くなったことを伝える。
ふざけ切ったことに、東京薪市場・鈴木社長は組合からの電話でショポンさんの死を知った後でも「うちは関係ない。貴方達と会う必要はない」と言い放ち逃亡を続けています。
組合の調査で、この鈴木洋樹なる人物は松下政経塾出身で元米沢市議も務めた人間と判明しました。この経営者を許すことは絶対にできません。APFS 労働組合の総力をあげて東京薪市場闘争を貫徹します。それができないなら、私たち組合の存在意義などないと言っていいでしょう。
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