2012年08月29日12時04分掲載
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核・原子力
【たんぽぽ舎発】原子力規制委員会の決め方に重大な問題あり 規制機関に関する国会事故調の提言を実現せよ 山崎久隆
『東京電力福島原子力発電所事故調査委員会』いわゆる「国会事故調」は法律に基づき国会の下に設置された委員会であり、「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」に規定された組織です。この法律は衆参両院全会一致で可決されたものであり、国会で全会一致で可決されたということは、国民の総意に基づいて設置された委員会です。
その国会事故調が、今後の課題の中でも大きなものとして提言したのが「原子力安全行政をどうするのか」という点です。国会事故調報告書(東京電力福島第一原子力発電所事故調査委員会報告書(2012年6月22日)の「提言5」において具体的に規定されています。実は政府が最も嫌ったのが、これであることも明白です。提言は記憶して繰り返し国会議員などに主張し続けるくらい、重要な内容を含みます。
以下に報告書の「ダイジェスト版」から要約します。
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▼新たな規制組織は以下の要件を満たすものとする。(要約)
1)高い独立性−政府内の推進組織からの独立性、事業者からの独立性、政治からの独立性。
2)透明性−意思決定過程を開示し、電気事業者等の利害関係者の関与を排除し、国会に対して全ての意思決定過程、決定参加者、施策実施状況等について報告する義務を課し、推進組織、事業者、政治との交渉折衝等には議事録を残し原則公開。
委員の選定は第三者機関で1次選定、相当数の候補者の選定を行わせた上で、国会同意人事として国会が最終決定。
3)専門能力と職務への責任感−新しい規制組織の人材を世界でも通用するレベルにまで早期に育成、グローバルな人材交流、教育、訓練を実施、外国人有識者を含む助言組織を設置、「ノーリターンルール」を当初より、例外なく適用。
4)一元化−特に緊急時の迅速な情報共有、意思決定、司令塔機能の発揮に向けて組織体制の効果的な一元化。
5)自律性−常に最新の知見を取り入れながら組織の見直し、自己変革を続けることを要求し、国会はその過程を監視。
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この中で、原子力規制委員会人事については『委員の選定は第三者機関で1次選定、相当数の候補者の選定を行わせた上で、国会同意人事として国会が最終決定』を実施しなければなりません。その前提として、選定委員会を国会内に設置し、幅広く候補者を集め、それを国会で審議し、決めていくことになります。この「候補者」は、「高い独立性」を有しなければならず、当然ながら過去に政府内外を問わず原子力推進組織の主要メンバだった人は除かなければ
なりません。また、候補者選定段階から「透明性」を確保する必要があります。
しかし、これを実現するどころか、国会事故調が報告書を出す前後に、原子力規制庁のと原子力規制委員会の根拠法を大慌てで成立させ、さらに田中俊一以下の原子力規正委員候補メンバー5人を早々に内定し、その案を国会に提出しています。これは国会事故調を軽視しているに止まらず、調査報告そのものの存在を無化しようとする悪質な行動に他なりません。このような妨害をする理由ははっきりしています。原子力産業や原子力学会等のいわゆる「原子力ムラ」にとっては、規制当局が「まともな」規制をはじめれば、推進体制が完全に行き詰まることは目に見えているからです。
新しい規制委員会が「まとも」に機能しないよう、原子力ムラの利益を守るような人物を送り込む、そのためには国会事故調の提言などは無視することを政府に迫った結果が、これでしょう。
福島原発事故調査で最も重要な点である「再発防止」に関わる原子力規制のあり方を、政府も国会も全く無視してしまったことで、国会事故調は意義を喪失させられようとしています。その点を国会議員一人一人は一体どのように受け止めているのか、その点を迫っていく必要があります。
今からでも遅くはありませんから、原子力規正委員会の委員候補を選ぶための選考をやり直し、国会の場で所信を聞いて審議すべきなのです。
そして当然ながら、次の選挙などでは今回のやり方に対する国会議員の立場を重大な判材料とすべきです。次の選挙後の新しい議会においては、再度国会事故調の報告書に基づく、国会における常設委員会の設置と、事故調メンバーの招致を含む国会審議が行われなければなりません。
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