2012年09月24日12時27分掲載
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http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201209241227531
遺伝子組み換え/ゲノム編集
遺伝子組み換えトウモロコシの長期給餌試験でラットに早死と腫瘍が多発 フランス・カン大学研究グループが突き止める
フランス・カン大学の研究グループが二年間の長期試験結果、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシを与えたラットが明らかに早死したり腫瘍が多発することを突き止めた。 研究グループは、こうした健康障害の原因は、GMトウモロコシによる内分泌のかく乱や、挿入遺伝子の過剰発現とその代謝の結果で説明できるとしている。試験に使われたのはモンサントの除草剤ラウンドアップ耐性コーン。GM食品お安全性は従来90日間の短期試験で判断され、安全とのお墨付きが与えられてきた。カン大学の研究はこれまでの安全性基準に全面的な見直しを迫るものといえる。有機農業ニュースクリップが伝えるその試験のあらましを紹介する。(大野和興)
■GMコーンの長期給餌試験 早期死亡と多発する腫瘍
遺伝子組み換え作物の健康影響評価は、通常は90日の急性試験で済まされている。フランスのカン大学の研究者らのグループは、モンサントのラウンドアップ耐性GMコーン(NK603)とラウンドアップについて、ラットに対する2年間の長期給餌試験をおこない、その結果を9月19日に公表した。研究結果は『Food and
Chemical Toxicology』に掲載された。
試験は、GMコーンを含むエサをを与えるグループ、通常のエサとラウンドアップを加えた水を与えるグループ、GMコーンとラウンドアップを加えた水を与えるグループについて行われた。各グループ、オス、メスが10匹づつの合計200匹で行われた。
その結果、対照群に比べて試験群では、早い時期に死亡したり、腫瘍が多発した。腫瘍も外から見てわかるような大きなものであった。
・雄では50%、雌では70%が早死にしている。対象群ではそれぞれ30%と20%。
・汚染量、性別に関係なく試験群は対照群よりも2-3倍大きなガンになった。
・実験開始24ヶ月目に入る頃には試験群の雌50-80%に最大3つのガン腫瘍が発生した。対象群は30%であった。
・最初に大きな腫瘍を確認したのは雄で4週後、雌で7週後、対象群では14ヵ月後だった。但し、大多数のガンが確認されたのは 18ヵ月後であった。
(Sustinable Pulse より)
研究グループは、こうした健康障害の原因は、ラウンドアップによる内分泌のかく乱や、挿入遺伝子の過剰発現とその代謝の結果で説明できるとしている。
今回の研究結果は、遺伝子組み換え作物について「実質同等性」のもとで、90日の短期試験で良しとしてきたことが、実は、遺伝子組み換え作物とそのシステムの数ある問題の一つとしての健康に関する問題点を、隠ぺいすることに他ならなかったことを意味している。遺伝子組み換え作物・食品の退場を求めたい。
百歩譲ったとしても、「遺伝子組み換え作物は安全である」とするならば、少なくとも、申請者の試験データに依存せず、独自の透明性ある長期試験を実施すると同時に、最低限、結果が確定するまで即時的なモラトリアムを行うべきだろう。
また、遺伝子組み換え食品にお墨付きを与えてきた食品食品安全委員会は、従来の安全性審査の基本的な点に疑義を示された以上、少なくともこの論文を検証するとともに、独自の透明性のある追試を行う必要がある。また、その結果を確認するまで審査中の案件審査を停止し、同時に、過去の「安全である」とした審査結果を検証するべきである。福島原発事故をみれば分かるように、危険性を指摘されても何ら動かず、口先だけで「安全」としてきたことが、大事故と取り返しのつかない大きな被害をもたらしたことを思い起こすことが必要だ。
2005年のロシア科学アカデミーのエルマコヴァ博士の予備的な給餌試験で、GMダイズを与えたラットの仔に異常が発生するという結果が公表された際には、遺伝子組み換え推進派はマスコミや研究者を動員してつぶしにかかった。古くは、GMジャガイモの健康障害について指摘し迫害されたプシュタイ博士(英国)の
例もある。今回早くもニューヨーク・タイムスに推進派が登場し、「奇妙な結果」であるとか「結論を出すには、試験頭数が少なすぎる」といった批判を述べている。イリノイ大学の某教授に至っては「純粋に科学的な発表ではない」「良く練られたメディア・イベントだ」と、科学的ではない評価を述べている。過去にも、
こうした発言をずっと見てきた気がする。なお、一方の当事者であるモンサント社はまだ、公式にはコメントしていないようだ。
・New York Times, 2012-9-19
"Foes of Modified Corn Find Support in a Study"
http://www.nytimes.com/2012/09/20/business/energy-environment/disputed-study-links-modified-corn-to-greater-health-risks.html?_r=1
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【論文】Food and Chemical Toxicology 2012年9月
"Long term toxicity of a Roundup herbicide
and a Roundup-tolerant genetically modified maize"
http://research.sustainablefoodtrust.org/wp-content/uploads/2012/09/Final-Paper.pdf
【記事】Sustinable Pulse, 2012-9-19
"CRIIGEN Study Links GM Maize and Roundup to
Premature Death and Cancer"
http://sustainablepulse.com/2012/09/19/criigen-study-links-gm-maize-roundup-premature-death-cancer/
【記事翻訳】Sustinable Pulse
早期の死亡とがんにGMコーンとラウンドアップが関連する
“Food and Chemical Toxicology”に発表された論文で、CRIIGEN のギレス・エリク・セラリーニ教授が率いる研究チームは、米国内の食品や飲料水の許容内のNK603のGMコーンやラウンドアップ水溶液を与えられたラットが通常の餌を与えられたラットよりも早期にガンを発生し死亡していることを明らかにした。乳癌と深刻な肝臓、腎臓の障害を受けていた。
モンサントのラウンドアップ除草剤とラウンドアップ耐性GMコーンNK603に対する世界初の長期給餌試験で、CRIIGENの研究者らは極微量でも雄では通常23ヶ月が4ヶ月、メスでは14ヶ月が7ヶ月で乳癌と深刻な肝臓と腎臓障害を引き起こすことを発見した。
実験は、1グループ雄10匹雌10匹からなる10グル−プについて寿命の尽きるまでを見た。3つのグループには暴露レベルによって異なる3段階の濃度で飲み水に除草剤ラウンドアップを入れて与えた。3つのグループにはラウンドアップ耐性コーンをそれぞれ11%、22%、33%混ぜて与えた。3つのグループは同量のラウンドアップ除草剤とGMコーンを混ぜて与えた。対照群には非GMコーンを33%混ぜた餌を与えた。
CRIIGENのメンバーでありロンドンのキングスカレッジの分子生物学者で遺伝子専門家のDr.ミシェル・アントニオウは、「今回のはGM食品とラウンドアップ除草剤の健康影響に関する最も周到な実験です。結果は異常な数のラットが早期にガンが発症すること、特に雌は重篤であることです。非常に悪影響が強いのに驚いています」と語った。
「ラットは人間への毒性を調べるために長く使われてきました。全ての新しい薬、農業資材、日用品はラットで試験しています。GMコーンとラウンドアップ除草剤は人体に重大な影響のあることの指標となります。」
レポートには、「低濃度から高濃度まで類似した病理が同程度で出るのは閾値のあることを示唆している。この閾値は、食品中に11%のGMコーンがあるか飲料水中に50ng/Lのグリホサートが場合に起こる。50ng/Lは、実験ラット群の最低濃度の値であり、政府許容値内の値で水道水に見られる汚染濃度でもある。
・雄では50%、雌では70%が早死にしている。対象群では夫々30%と20%。
・汚染量、性別に関係なく試験群は対照群よりも2-3倍大きなガンになった。
・実験開始24ヶ月目に入る頃には試験群の雌50-80%に最大3つのガン腫瘍が発生した。対象群は30%であった。
・最初に大きな腫瘍を確認したのは雄で4週後、雌で7週後、対象群では14ヵ月後だった。但し、大多数のガンが確認されたのは18ヵ月後であった。
この実験の結果は、現在の化学物質、除草剤、新作物の承認プロセスには重大な疑問を提起するものである。現在GM作物の安全としての認証は90日給餌試験に基づいている。また、対象も有効成分であるグリホサートのみで製品に含まれる界面活性剤を含む試験を行っていない。
(訳:YK)
注:グリホサートは、モンサントの除草剤ラウンドアップの主成分。
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