2012年10月02日21時59分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201210022159022
コラム
パリジェンヌの日記(Le journal d'une Parisienne) ヴィルジニー・ブリエン
■8月のパリ
8月のパリはとにかく閑散として、物静かだと言われている。住民がこぞってパリをあとにするからだと。でも、それは単なる伝説?それとも現実?確かに8月のパリは普段だったら人が歩いている歩道が空っぽ。交通量も少ない。地下鉄はラッシュが解消、人々のテンポもスローになる。商店も企業も閉まっているようだ・・・
つまり、8月のパリが閑散としているというのは伝説ではない。だけど、たとえ現実であったとしてもだんだん真実ではなくなりつつある。だが、そうは言っても・・・・
パリの人々がこぞって8月になるとパリから避難する理由は何なのか?それは思うに「強いられた避難」に他ならない。子供のいない人たちまで、なぜ8月にバカンスに出かけるの?みんながそうするから?親になった友人がみなバカンスに出かけるから、それに合わせて?あるいは高いお金を払うため?なぜって、8月の旅行料金って1年で一番高いもの・・・つまり、人々は夏を自由に楽しむというよりは、何はともあれまず旅行プランを確保しようとするのかもしれない。
あるいは、寂しく嘆かわしいパリに取り残されたくないため?そこで二つの陣営に分かれる。一方には8月のパリは魔法にかけられたかのように素晴らしくなると思う人々がいてこの期間、パリは彼らのものになる。その一方で、8月のパリは面白くないと考える人々がいる。そこで1つの疑問が湧き起る。8月のパリに居残るのは幸運か、不運かということだ。
8月のパリがとても悲しくて陰気だと思っている私の仲間たちはみんな去っていった。あぁ、8月のパリにとどまるのはまったく意気消沈だ!そこには本当に重苦しい空気が漂っている。なぜって、パリに残る人々の多くはやむをえず残っているのだから。彼らの顔には微笑みがない・・・
確かに地下鉄は人が減って穏やかになる。しかし、そこには別な不安が醸しだされている。人々が去ったあと、残された寂しい顔のゾンビたちが地下鉄を占拠するのだ。それもまた耐え難い。まったく鳥肌が立つ。通りは静かだが、町の空気はうっとうしい。あぁ、幸運にもパリから避難できた仲間たちのことを思う・・・
パリに残れば憂鬱しかない。そこで私、今年も8月にパリを離れる決意をした。向うのは駅!でもどこへ?
トゥーレーヌ。ライ麦のわらに寝そべって山羊のチーズを味わう。トゥーレーヌのサント・モール。最高だわ・・・
ドルドーニュでフォアグラを味わう。フォアグラのコンフィと鴨のササミ。サルラ風ジャガイモ料理。ご馳走の山だ。
ケルシーでは絵になる街並みを訪ねる。中世に造られた都市、麦わら帽子の元祖。昼間の盛りだくさんの悦楽に続き、夜はバウールで人と会う。ターンのウッドストックに出かける。そこでは年一度の音楽祭が行われている。居酒屋があり、草原があり、音楽にゆかりの施設がある。そこには気立てのよい新手のヒッピーたちが集まっている。
でも、こうした日々も8月限り。だから私はパリに帰る・・・そこにはまたいつもの魅力が戻っているのだ!
(続く)
寄稿 ヴィルジニー・ブリエン(Virginie Brien)
翻訳 村上良太
■トゥーレーヌ(Touraine)
フランス中西部の地域。パリ盆地に位置する。ロワール川が町を横切り、ブドウ栽培で知られる。
■ドルドーニュ(Dordogne)
フランス南西部の地域。面積の半数近くを森林が占める。ボルドーワインで知られるボルドーの近くにあり、ボルドーと似たタイプのワインが作られている。
■ケルシー(Quercy)
フランス南西部の地域。古城が多数存在する。
■パリの大雪 映像と写真
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201012292121473
■パリの散歩道13 パリの芸術家天国
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201010021128496
■パリの散歩道 16 ついに個展会場をゲット
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201109191622571
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。