2012年10月08日14時24分掲載  無料記事
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ロシアン・カクテル

(41)著名作家らが反プーチンの“テスト散歩”を開始 タチヤーナ・スニトコ

  ロシアの文学・芸術と政治的なプロセスは奇妙なことに織り混ざっている。 
 今年、ロシアの国家院(ロシア語:“Дума”ドゥマ)は急いで幾つかの法律を作った。その法律の目的は反プーチンの活動を止めることであった。例えば、6月に集会に関する法律ができた。その法律では、沢山の人々が同時に一緒にいることや一緒に市内を移動すること(街を歩く)ことは禁止されている。実際にその法律は憲法31条の「集会の自由」を破棄した。 
 
 その法律に対して反対の意見を“述べる”表示がモスクワのパトリアルシイェ・プルヂー(池と小さな公園)に出現した。その表示にはミハイル・ブルガーコフの「巨匠とマルガリータ」という小説の登場人物のシルエットが描かれており、そして「見知らぬ人と話すことを禁ずる」と書いてあるのでした: 
 
 ミハイル・ブルガーゴフ作の「巨匠とマルガリータ」の第一章のタイトルには、「決して知らない人と話さないでください」とあります。パトリアルシイェ・プルジーでは初めてヴォランドと名乗る外国人(悪魔)が彼の“同伴者”と一緒に現れた。ヴォランドとの出合いでベルリオーズの“問題”が始まった。 
 「ヴォランドはベルリオーズに五分後には何が起こるかわかりませんよと言って、ベルリオーズの死を予言しました。その予言は、ベルリオーズは若い女性に頭をかき切られるという予言でした。ベルリオーズはヴォランドの言葉を信じませんでした。しかし、その後間もなく 市内電車のレールの上で滑って電車に轢かれ首が切り落とされてしまいました。その電車の運転手は若い女性でした。」 
 
 ヴォランドがモスクワに現れるということは、「悪」がモスクワに現れたという意味します。ミハイル・ブルガーコフは「巨匠とマルガリータ」を書いたスターリン時代にはそれは事実でした。 
 
 “一緒にいること・一緒に移動すること(街を歩く)の禁止”という法律に対して、”面白い“反対活動が現れた。人々は市役所に次のような嘆願書や届出書を提出し始めた:「友達と一緒にスーパーへパンを買いに行きたい」や「犬を外へ散歩させたい」という嘆願書、「”ロシア連邦の憲法“をベンチで読みたい」という届出書などである。 
 
 有名なロシアの作家ボリス・アクニンはあるインテリと“テスト散歩”に出かけました。そのテスト散歩で二人のロシアの作家の像の間を歩いて行きました:プーシキン広場にあるプーシキンの像からグリボイェドヴの像までを歩きました。その““テスト散歩”の目的は、モスクワの人々は自由に散歩出来るか?散歩には特別な“許可”が必要か?”であった。沢山の人々が有名な作家・詩人・画家・監督・記者などと一緒に街を歩きました。 
 
 現在のロシアでは反プーチンの活動が強まっています。 
 
 現在のロシアの政権は反対活動に参加する人々と戦っています。最近の作られた法律(“中傷行為に関する法律”、“売国行為に関する法律”など)で、誰にでも有罪の判決が下されて刑務所送りになっています。「ホドルコフスキー・レベデヴ(ロシアの元ユコス石油会社オーナーと側近の詐欺と脱税疑惑)」裁判や「プッシー・ライオット(Pussy Riot、フェミニスト・ パンク・ロック集団。許可を取らずに、モスクワ地下鉄や赤の広場で即興演奏)」裁判などの大きな裁判事件は世界中でよく知られていますが、知られていない裁判事件もとても多いのです。 
 
 政権は反対の意見を持っている有名人たちとの“戦い”の中で汚い手段も使っています。例えば、「チェスの13番目の世界チャンピオンであるカスパロヴェは警官を噛んだ」、作家アクニンは旅行する際には、必ず町の墓地と娼家を訪問する。」などの情報がマスコミに流された。 
 こんなことが、文学を中心とするロシア文化社会の中でなされています! 
 
 ところで、ロシアの作家たちの人生は決してやさしいものではありませんでした。そのため、ロシア文学には複雑な背景が形成されています。 
 ドストエフスキーは秘密政治結社のメンバーであり、逮捕され、その後銃殺刑が下されたが、処刑の実施一分前に恩赦が出され、懲役4年間・兵役6年間に減刑になった。詩人プーシキンは「ロシアを言語道断な詩で氾濫させた」という理由でコーカサスへの流刑に処された。トルストイはロシア正教会から破門された。等々である。 
 
 才能ある人たちの人生は滅多なことでは楽になりません。苦難は心を発展させるとよく言われています。 
 
 現在のロシアでは、各人が“善の道”か“悪の道”を選択しなければなりません。 
 多くの人々は反プーチン活動に参加し始めています。多くの有名人たちも、その中には前ソ連大統領ミハイル・ゴルバチョフや前副首相兼財務大臣アレクセイ・クドリンなどもいます、反対活動の要求である「再選挙、政治逮捕者の解放など」の要求を共有しています。 
 
 ところで、まだ多くの人々は良心を大事にする精神性よりも実質的な生活の豊かさを好みます。 
 プーチンはウラル車輌工場(ウラルヴァゴンザヴォード)のホルマンスキフ戦車製造の分工場の工場長(!)を中部ウラル地方の大統領全権代表(!)に指名しました。その理由は何だと思いますか?テレビ会談の中でホルマンスキフは言いました:「必要なら、反プーチン活動者と戦うためなら、私はモスクワへ戦車に乗って行く!」と。知識や技能ではありません、忠誠が大事なのです! 
 
 レフ・トルソトイの玄孫(孫の孫)であるヤースナヤ‐ポリャーナにある「トルストイの屋敷」博物館長であるウラジーミル・トルストイは、2011年に、“ホドルコフスキー・レベデヴ”裁判の2回目の裁判に提出された有名な「55人の手紙」にサインをしました。その手紙には「政治逮捕の解放を要求する反対活動家たちから裁判システムを守ろう」と書かれていました。大統領選挙の際には、ウラジーミル・トルストイはプーチンからの権限委任者(trustee)に指名されました、そして選挙の2週間後には大統領のアドバイザー(!)となりました。 
 
 ロシアのブイリーナ(民謡的叙事詩)には、勇士イリヤー・ムーロメツは道の分岐点にある石に刻まれた次の言葉を読んでいる: 
「右に行けば馬を失う、真っすぐ行けば頭を失う(おまえが死ぬ)、左に行けば馬も頭も失う」 
 
 ある時代には、人も国も難しい選択をしなければならない。 


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