2012年10月25日15時15分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201210251515264
核・原子力
【たんぽぽ舎発】インドの原発反対運動(上)「クダンクラムに反対する国際請願」署名者に入国拒否 山崎久隆
「クダンクラムに反対する国際請願に署名したな?あなたの名前も乗っていたぞ。つまりあなたは反原発だということだ」…スパイ小説のような事件が本当に起きた。日本からクダンクラム原発反対運動を取り組む住民との交流に向かった三人の人々が国外退去になった9月25日、チェンナイ空港で空港警備員から浴びせられた言葉だという。
◆インドの原発反対運動
到着ロビーに待機し、飛行機から降りてくるや行く手を遮られ、別室に連れて行かれてなされた事情聴取、その後に「国外退去処分」。その理由は「1948年施行の外国人令の第6節で規定されている行動に外れた行いを取る可能性があるので、できるだけ早い航空便で国外に追放する」すなわち好ましからざる人物というわけだ。既に3人の日本国内での活動までも調べられており、背後に大きな国家機関の意思を感じる。(ここまでノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン事務局の報告より)
9月10日にはクランクラム原発をめぐり建設現場周囲に集まった市民に対して治安当局が発砲し、1名が死亡した。
それでも13日には1500名の市民により、海側から原発包囲行動が取り組まれ、決してひるんではいないことを示した。
クダンクラム原発反対が大きく広がったのは言うまでも無く福島第一原発事故を見たからだ。原発がどういうものか、1000の言葉よりも現実に起きた事故が物語る。今も続く15万人の人々の避難生活。ひとたび原発が事故を起こせば土地も住まいも失う現実を前に、原発を止めることを決意した人々がインドにも大勢いた。
クダンクラム原発は100万kw原発を2基建設中だ。炉型はいずれも「VVER1000」というロシア製加圧水型軽水炉。チェルノブイリ原発事故以後設計に欠陥があるとして当時の東ドイツなどの原発が問題とされた「VVER440」の改良型で、同時に規模も大きくなっている。
◆津波被害を受けたインド
クダンクラム原発が立地されたインド南部のタルミナド州は2004年のスマトラ島沖地震(M9.2)の際に津波被害にあっている。市民が福島第一原発事故とダブって見るのは当然だ。実際にインドのマドラス原発は津波により被害を受けており、これが津波により被災した原発第一号だ。
インドの原発も多くは海岸地域に立地している。津波想定がほとんど無いのも日本と同じ。同時にサイクロンの高潮対策も不十分。これまでは軍事機密でもあった原子力はインド社会において安全性議論はほとんどなされてこなかった。
現在インドで稼働中の原発は20基だが、合計出力は478万kwに止まる。一基あたりの出力が日本などに比べ低い。これを2030年までに40基新設し、約6300万キロワットに拡大する計画をインド政府は進めている。一基あたりの出力が急に数倍規模になるわけで、これはこれで危険性も大きくなる。
さらにインドでは高速炉開発計画も進められており、核武装国でもあるから軍用核開発も進められている。言うまでもなく、同じ核武装国の隣国パキスタンや中国との緊張関係も解消しているわけではない。南アジアの火薬庫、ジャム・カシミール帰属問題もあり、核を巡るあらゆる問題が凝縮している国だ。
そのため市民運動に対する治安当局の攻撃は熾烈を極めている。
(続く)
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。