2013年01月01日12時51分掲載
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政治
【編集長妄言】極右政権誕生と社会運動 大野和興
極右が政権を占拠し、年が明けた。7月の参院選挙の結果次第では憲法改定は年内にも現実の課題として目の前に迫ってくるだろう。改憲勢力が三分の二を超えた今回の総選挙結果をどう見るか。いろんな視座からの分析があるだろうが、自身もその中に身を置く社会運動の場から、なぜこうなったかを考えてみたい。
選挙結果をテレビでみながら考えたのは、脱原発にしろTPP反対にしろ、あるいは憲法にしろ、今の社会運動がいかに人びとのくらしから離れたところで動いているかということだった。これらはいずれも今回の選挙で争点になったものだ。毎週金曜日の官邸前脱原発アクションは、主催者発表で毎回万を超える人が集まり、とてもはなやかに展開されていた。それだけで見る限り、世の中は脱原発一色と錯覚しかねないほどだった。だが結果は、乱立した諸政党の中で唯一原発推進を正面から掲げた自民党が圧勝した。あの盛り上がりは一体何だったのか。今回の選挙結果は選挙制度の詐術だという分析が飛び交っている。票の分析からいえば、ある意味正しいのだろうが、負けは負けなのだ。
なぜそうなったのか。思い当たることがある。この二年、反TPPの運動作りに仲間と正面から関わり、政党や職種、社会運動の分野を超えたラウンドテーブルを作ったりしてきた。11月、選挙が視野に入ったころ、ラウンドテーブルで選挙対策を話し合った。自民党や維新が改憲を大きく掲げていたときであり、人びとが安心して生きる基盤を壊すTPP反対を憲法の平和的生存権と結びつけて、護憲・脱原発・反TPP・普天間・オスプレイ・反貧困を大きくくるむ陣形をつくるべきだという話をしたのだが、「ここはTPPシングルイシューだから」と一蹴された。
こうして国防軍創設・基本的人権の制限を含む憲法草案を公約に掲げた自民党が圧勝した。自民党はTPP問題を巧妙にオブラートに包み、争点から外した。この結果、農村部の反TPP票のほとんどは自民党に流れた。
この世界も、くらしも、シングルイシューではできあがっていない。すべてが根っこでつながっている。だが、社会運動はいま、それぞれのシングルイシューにとらわれ、くらしの総合性をみていない。当然、社会運動の主張は人びとのくらしの根っこには届かないことになる。自身への反省を込めていうのだが、今回の選挙結果が示したのは、くらしに根っこも持たない社会運動の弱さである。極右政権に対抗する陣形をくらしの場から作りけなければならないとつくづく感じている。
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