2013年02月19日00時12分掲載
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検証・メディア
朝日「Journalism」が沖縄報道特集 −「沖縄を感じる皮膚感覚」の欠落はどこから来るのか?
沖縄問題、沖縄報道は、気になるトピックである。沖縄の現地と東京を中心とした報道界には「温度差」があると言われている。その温度差(もしあるとすれば)は一体、どういうことなのか、現地で報道する人はどんな気持ちを持っているのか?これを検証したのが、朝日新聞出版の月刊誌「Journalism」2月号。沖縄報道の特集が組まれている。(小林恭子)
国の中央と地方の間の、個々の問題に対する、いわゆる温度差は、ここ英国でもある。例えばだが、北のスコットランド、それから英領北アイルランドとロンドンでは随分とものの見方や政治環境が異なる。
しかし、沖縄の場合は、見方・感じ方の違いが、報道の熱さの違いになるばかりか(ここまでは英国も同じ)、「沖縄の問題を東京で決めている」ことで、沖縄に対して差別といわざるを得ない状況が生じている点だろうー少なくとも、私の理解ではそうである。
沖縄問題(ここでは基地問題だけれども)の解決は、原発(=エネルギー)問題と同じかそれ以上に日本にとって、大きな問題の1つだろう。これは沖縄から遠く離れた土地にいても、理解は難しくない。
「本土紙との溝を埋める」、「『沖縄』を感じる皮膚感覚」を、「中央の取材記者に求めたい」という表現が、記事の1つに出てくる。英国のスコットランドや、北アイルランドとは別の意味での溝があるなら、それはなぜ発生しているのだろう?
沖縄に住んでいない人にとって、沖縄問題は理論的な問題として認識されがちな面は避けられないとしても、本当に普通に考えると、基地が集中していることへの問題意識は、実はとても持ちやすいと思う。地理的に離れていることはあまり理由にならないだろう。
そこで、なぜ「本土の報道陣」が「皮膚感覚がもてない」のか、この部分を探りながら読んだ。
いくつかの答えが特集の中で示唆されている。例えば、琉球新報政治部長松元剛氏は、「外務省や防衛省で政治部の主流に携わっている記者」が、「政府の言う『日米同盟の強化』『アメリカとの関係の強化』という枠の中で、思考停止して、官僚と似たような目線で沖縄問題を扱ってないでしょうか」と問いかける。
ジャーナリスト外岡秀俊氏が、「外務省には、アメリカが撤退したらどうしようという恐怖心があるんだと思います」、「アメリカが守ってくれているから退かれたら大変だという恐怖心でがんじがらめになっている。記者も取材しているうちに自然とそうなっていく気がします。」
ほかにもいろいろ、興味深い指摘が続く。
以下はその主な見出しである。
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特集
沖縄報道を問い直す
[鼎談]
本土紙と地元紙の溝を埋める −「沖縄報道」に欠けている視点(松元 剛、琉球新報政治部長、比屋根 照夫、琉球大学名誉教授、外岡 秀俊、ジャーナリスト)
普天間問題の打開策を探る −メディアの役割とメディアへの期待( 長元 朝浩、沖縄タイムス社論説委員長)
沖縄報道を考える −問われるのは国民国家としての日本 (大野 博人、朝日新聞論説主幹)
地元メディアと本土メディア −沖縄報道を考えるための基礎知識 (語り手、音 好宏、上智大学文学部新聞学科教授)
復帰40年の幻想と現実を映す −沖縄イメージと地元雑誌の変遷 (新城 和博、沖縄県産本編集者)
アメリカの大手メディアでは「沖縄」はどう伝えられているのか(瀧口 範子、フリーランス編集者、ジャーナリスト)
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私も、今月号に性犯罪疑惑放送中止事件とBBCについて、寄稿している。この事件は、当初、BBC上層部からの圧力があって、番組の放送が中止になったといわれていた。しかし、12月末に発表された調査報告書によると、そうではなかった。担当者の自粛や他部署との連絡の悪さなど、管理上の問題から生じていた、という話だ。
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