2013年02月27日23時38分掲載
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コラム
機内持ち込み品 村上良太
先日、アフリカに行く用事があり、飛行機に乗った。航空会社はエミレイツ航空でドバイを経由する便だった。エミレイツ航空で機内食が出た時、ナイフやフォークが入っているカトラリーの容器が妙に重い。開けてみると、金属製のセットだったのでドキッとした。2001年の同時多発テロ事件以後、プラスティックの道具しか見たことがなかったからだ。とはいえ、ナイフと言っても鋭利なものではない。だから、大丈夫だと判断されたのだろう。そもそも金属だから危険で、プラスチックだから安全とは一概に言えないだろう。
さて、アフリカで用事を済ませて、帰りの飛行機に乗る時、持ち物検査の場所で、X線チェックをしている人が僕のカバンに目をとめた。そこにはワニの形が黒く映っていたからだ。
「あなた、これは生きているのか、生きていないのか?」
係官が尋ねた。それは石でワニをかたどった彫刻品だった。土産にしようとしたもので、大きさは頭から尻尾まで10センチ弱。ワニの形の彫刻を見せると、係官はこう告げた。
「これは機内に持ち込むことはできない。ここに置いていくか、いやならもう一度外に出て航空会社に頼んで預かり荷物扱いにしてもらうことだ」
一瞬、理不尽な気がしたが、面倒くささにめげて置いていくことにした。しかし、大量生産の工業製品でなく、1つ1つ彫刻家が手彫りしたものだ。どうしても納得できないので踵を返して係官に質問した。
「ワニの彫刻品のどこが問題なんですかね?」
すると係官はこう言った。
「もしこれを他の乗客が見たら、生きていると思ってパニックになるかもしれない。」
「それは法規としてダメなのですか?そんな基準があるのですか?」
「法規としてダメだ。」
そこでワニの彫刻品を持って検査場から預ける手荷物にしてもらうためにチェックインカウンターへ戻ろうとすると、今度は別の係官が僕を呼び止めた。
「あんた、いったいどこへ行くのかね?」
そこで経緯を説明すると、係官は言った。
「ワニはカバンにしまっておけ。いったい、誰が駄目だと言っとるんだ?」
僕は先ほどの係官を指さした。二人は互いに多少険悪な感じで向かい合って話し始めた。だが、結局問題はなかったのでそのまま機内に持ち込んだ。
帰国後、成田空港のウェブサイトを見ると、機内持ち込み禁止の品物が列記されている。銃やナイフ、爆発物などが持ち込み禁止なのは今更言うまでもないが、液体も一定以上の量になると禁止されている。ヌンチャクや十手などの護身具も持ち込み禁止である。注射針や安全ピンもダメだ。ピンセットもダメだ。
しかし、彫刻の小さなワニについては規定はない。尻尾があるが、先が特に鋭利なわけでもない。こういったものについては担当官によって判断が別れるのかもしれない。ただし、X線でワニの形が映るのであれば無用な手間をかけてしまうから、今後は預ける荷物に入れることにしよう。と言っても、こんなことは滅多にないかもしれないが。
■国土交通省「機内持込・お預け手荷物における危険物について」
http://www.mlit.go.jp/common/000185234.pdf
「航空法では爆発のおそれがあるもの、燃えやすいもの、その他人に危害を与え、または他の物件を損傷するおそれのあるものを「危険物」とし、航空機による輸送及び航空機内への持ち込みを禁止しています。そのような危険物の中には、一定の数量制限の下機内持込み手荷物かお預け手荷物として運べるものもあります。」
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