2013年03月09日14時11分掲載
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核・原子力
「放射線量の警報を無視して作業続けよ」の指示 福島原発作業員が豪ABC放送に語る
3・11の東電福島原発事故から2年目を控え、オーストラリアの公共放送ABCは7日、事故直後に復旧作業にあたった作業員への独占インタビューを放送した。「しんいち」と名乗る男性は、メルトダウン(炉心溶融)が起きてから10日ほど後に冷却作業を含む復旧作業にあたり被爆したが、十分な防護装備を着用しないまま作業せざるをえなかったと述べている。(クアラルンプール=和田等)
同原発の復旧作業員に関しては、体調不良などで亡くなった人がわかっているだけでも6人出ている。ABCのマーク・ウィラシー・北アジア特派員のインタビューに応じた「しんいち」さんは、東京電力が運営する、福島原発を含む原子力発電関連施設での17年におよぶ作業歴を持つという。
彼は、ほかの5人の作業員とともにレインコートと顔を覆うマスクを着用しただけで、放射線量測定器を身につけてメルトダウンを起こしていた福島第一原発3号機のタービン建屋に入り、原子炉に真水を注入するための電気ケーブルを接続する作業にあたるよう指示された。しかし、事前に中の様子がどうなっているのかについての説明はなかったという。
しんいちさんによれば、作業を開始してすぐに放射線量測定器が放射線量の限界値に達したことを知らせる警報音を発したが、東電から作業を請け負った大手業者のマネージャーは、「測定器は壊れているに違いない」と言って警報を無視して作業を続けるよう指示したという。
「中は真っ暗で何も見えなかった。頭にくくりつけていたライトを点灯して下をみたら、光が水に反射したので、いたるところに浸水していることがわかった」と語るしんいちさん。
「中の雰囲気は不気味で、恐怖を感じたけれど、その場を立ち去ることは許されなかった」とも。
しんいちさんの仲間の作業員3人(30代2人と20代1人)が電気ケーブルを接続する作業などにあたるため下に降りたが、ゴム長靴を履いていたのは1人だけで、ほかの2人はくるぶしの高さまでしかない短靴を履いていただけだったので、短靴の上部から放射線物質を含んだ水が入り、くるぶしまで水につかっていたという。この結果、2人の足の皮膚は放射性物質で汚染され、やけどのような症状を示す「ベータ線熱傷」に負うにいたった。ベータ線熱傷は軽い痛みや水ほうを伴うが、病院に運ばれた2人に外傷は認められていなかったという。
またこれら作業員3人は、年間許容被爆限度の4倍に近い180ミリ・シーベルトの放射線を浴びた。
こうした危険な作業を強いられたしんいちさんは、東電や作業を請け負った業者を相手取って訴訟を起こす意向を示している。
一方、ABCは、原発事故前から福島原発労働者からの相談活動に日常的に取り組んできた福島県いわき市の渡辺博之市議(共産党所属)にもインタビューした。「原発の復旧作業にあたる労働者は、下請け業者による危険手当のピンハネや、放射線被爆量に達した時点での使い捨て、仕事の中断を余儀なくされるなど、条件が悪化していくのに伴い、士気を失いつつある」との発言を引き出し、これからの復旧作業に暗雲が漂い始めたとの警鐘を鳴らしている。
原文のサイトURLは、以下の通り。
◆Fukushima workers 'told to ignore radiation alerts'
http://www.radioaustralia.net.au/asia/2013-03-07/fukushima-workers-told-to-ignore-radiation-alerts/1098236
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