2013年03月17日12時11分掲載  無料記事
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TPP/脱グローバリゼーション

TPP:農業生産の減少は国際的な食糧価格上昇を招かないか

 3月15日の安倍首相のTPP参加宣言に関し、農産物への影響が約3兆億円の減少という政府見解が明らかにされた。公表された試算シナリオ「農林水産物への影響試算の計算方法について」は、次のようないくつかの仮定の上の試算している。(有機農業ニュースクリップ) 
 
・卸売価格で計算 
 
・競合する国産品は、原則として、対象国の輸出余力分だけ安価な輸入品に置き換わる。残存する国産品の価格は、関税分のみ減少。 
  生産減少額=国産品価格×競合する国産品生産量 (1) 
 
・競合しない国産品は、安価な輸入品の流通に伴って価格が低下する。競合する国産品が輸入品に置き換わる部分の価格低下率(内外価格差÷国産品価格)の1/2の割合で、競合しない国産品の価格が低下すると見積もる。 
  生産減少額=価格低下分×競合しない国産品生産量 (2) 
 
 その上で、農産物2兆6600億円、林水産物3000億円が減少すると見積もっている。主な品目の減少は次のように見積もられている。 
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   米   32% 約1兆100億円 国内生産量の約3割が輸入に 
                 置き換わる。それ以外の国内 
                 生産は価格下落 
   小麦  99%  約770億円 国内産小麦をセールスポイン 
                 トとした小麦粉用小麦を除い 
                 て置き換わる 
   大麦  79%   約230億円 主食用、味噌用は残る 
   砂糖  100% 約1500億円 すべて置き換わる 
   トマト 100%   約270億円 加工要はすべて置き換わる 
   牛乳  45%  約2900億円 鮮度が重視される生クリーム 
   乳製品           等を除いて全て置き換わる。 
                 飲用乳は、大部分が北海道産 
                 に置き換わり、他府県は全滅 
   牛肉  68%  約3600億円 4等級及び5等級は残り、他 
                 は一部を除いて置き換わる 
   豚肉  70%  約4600億円 銘柄豚以外は置き換わる 
   鶏肉  20%   約990億円 業務・加工用の1/2が置き換わる 
 
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  このほか、でん粉原料作物は100%、いんげんや小豆は高級和菓子用を除いて輸入に置き換わる一方、こんにゃくと茶はほとんど減少しないとみている。 
 
 ・内閣官房, 2013-3-15 
  「関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算」 
   http://www.maff.go.jp/j/kanbo/saisei/pdf/01_cao.pdf 
  「農林水産物への影響試算の計算方法について」 
   http://www.maff.go.jp/j/kanbo/saisei/pdf/02_cao.pdf 
 
 農水省の米についての試算は、約3割が輸入に入れ換わり、その価格はキロ117円まで下がると見積もっている(この減少分が6500億円)。残った国産米も、銘柄米であったとしても26%の価格低下を生ずると見積もっている。しかし、試算シナリオでも「短粒種の増産が行われることも想定されるが、その拡大ペースや規模は現時点では予測が困難」と述べているように、この見積もり以上の下落をもたらす可能性も否定できない。 
 
 さらに問題となるのは、食糧価格が上昇している状況で、日本が輸入することによる、国際的な食糧価格のさらなる上昇の可能性である。食糧貿易の流れが変わることで、食糧を得られない、得にくくなる人々が増えることは願い下げである。作れる“作物”は作ればよい。TPPの対極にあるのは、生産者と消費者が直接的に結びつく協同組合的な関係、というのはあまりに牧歌的だろうか。 


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