2013年03月27日18時14分掲載
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コラム
イラク戦争から10年 大新聞の記事を読んで
朝日新聞は3月20日付の朝刊でイラク戦争を取り上げ、「開戦から10年」という見出しの特集を大きく組んでいた。記事の目玉は当時、小泉政権の官房長官だった福田康夫氏へのインタビューである。この中で、福田氏は当時は大量破壊兵器がイラクにあるのかないのか、情報がなかったと語っている。
記事は1面から2面に続く。福田康夫元官房長官に朝日新聞はこう質問している。
「−開戦支持表明が日米同盟に与えた影響は。
(福田)ベーカー駐日米大使から「米国も困っている」と聞かされた。(日本の支持で)米国に対し、ものすごく日本のプレゼンスを高めた。結果的には正しかった。」
記事はこうした判断が結果的にブッシュ・小泉関係を強化する決定打になった、と結んでいる。さて、この最後の開戦支持表明に関するくだりの小見出しは<<開戦支持の総括>>となっている。果たして、これが総括なのだろうか?これは<<日米同盟に与えた影響の総括>>ではあっても、<<開戦支持の総括>>と言うのは飛躍しているのではないか。
朝日新聞は同日の社説で「足かけ9年の戦闘で、死亡した米兵は4500人近く、イラク民間人の犠牲者は12万人以上にのぼるともいう」と書き、「政治は検証と反省を」と書いている。朝日新聞の社説はイラク戦争で一番犠牲になったのはイラクの民間犠牲者であると認識している。にも関わらず、2面の福田元官房長官のインタビューの最後に<<開戦支持の総括>>と見出しを付して「結果的には正しかった」という福田氏の言葉をつけている。
日本政府にとってイラク戦争の開戦支持の総括というのなら、日米同盟だけではなく、開戦で失われたイラク市民の命や巻き込まれて亡くなった日本人青年の命も含めるべきではないのだろうか。それでも開戦支持でよかったというのが総括であるなら、その根拠を述べて欲しいものである。しかしながら、筆者が感じた違和感は福田氏のコメントではなく、朝日新聞の見出しのつけ方の不誠実さにある。
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