2013年04月14日20時02分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201304142002540

みる・よむ・きく

レーモン・クノー作「文体練習」 

 言語の実験に果敢に取り組んだフランスの作家レーモン・クノーの「Exercice de style」は日本で「文体練習」という題の邦訳で出版されている。これは短いひとつの話を99通りの表現で綴り集めたものである。その話とは次のようなものだ。 
 
  昼過ぎ、満員の路線バスで出会った26歳の首の長い青年の話である。青年はバスの中で、横にいた人物に怒りをぶつける。人が通路を通り過ぎる度に青年に体がぶつかったからだ。筆者は2時間後、同じ青年をパリのサンラザール駅前の広場で見かける。青年は一人の友人といる。青年の友人が「オーバーにもう一つボタンをつけろ」と青年に忠告している。 
 
  これだけである。特段落ちもなく、クノーの有名な小説「地下鉄のザジ」のような悪戯もない。読者はクノーがなぜこのような話を選んだのかと思うかもしれない。クノーはこの話をたとえば「・・・でもなく・・・でもなく○○で・・・」というような否定を最初に重ねる「否定的表現」とか、「!」が続く「驚き表現」とか、匂いにこだわってつづった「匂い的表現」とか、さまざまな文体で話をつづって見せる。 
 
  こうした実験はテレビの映像においても有効だろう。1つのシークエンスを俯瞰的表現、煽り的表現、主観的表現、恐怖的表現、エロス的表現、回想的表現、ニュース的表現、おとぎ話的表現など様々な表現にできるだろう。 
 
■パリの散歩道11 パリのブッキッシュな青春「1969年」 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201009182202136 
  レーモン・クノーはアルフレッド・ジャリが創設した実験文学集団「コレージュ・ド・パタフィジック」のメンバーだった。1960年にはウリポという前衛文学のグループにも参加している。 
 
  「(クノーの処女作)『はまむぎ』は1933年に発表されたが、のちのヌーヴォー・ロマンの先駆をなす前衛的な作品であったにもかかわらず(あるいは前衛的だったために)文壇からは黙殺された。これに憤慨したジョルジュ・バタイユやミシェル・レリスをはじめとする13人の友人たちは、アンドレ・マルローの『人間の条件』がゴンクール賞を受賞したのと同じ日に、パリの老舗カフェ「ドゥ・マゴ」においてクノーに与えるためだけの文学賞をみずから新設し、一人100フランずつポケットマネーを出し合って賞金1300フランをクノーに授与した。これがのちにフランス文壇においてゴンクール賞と並んで権威ある文学賞となったドゥ・マゴ賞の発足の経緯である。」(ウィキペディアより) 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。