2013年04月20日01時07分掲載
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コラム
記憶力の不思議 鬼塚忠
昨日、非常に興味深い女性に話を聞くことができた。
彼女は30代女性。日本の最高学府を出て、今は某有名大学で教えている。話をするだけでその知識の豊富さに驚く。とにかく何でも知っている。その読書量が半端じゃない。日に複数冊は読む。それも一冊を平均三十分で読むという。
話はこれで終わらない。
誰もがうらやむその才能と教養が、実は彼女を苦しめることもある。
というのはその彼女、記憶力が良すぎて、見聞したものを忘れられない。記憶がどんどん膨張して、頭がいっぱいになり、頭が記憶で圧迫される 。その症状に悩まされているというのだ。想像しがたい苦悩だ。
そしてもうひとつ。
彼女は頭が良すぎて、文字に過敏すぎる。文字を読むと感情に突きささるので、家では見えるところにある文字はすべて消している。ティッシュなど箱に入れて文字を隠し、本棚には布をかけて商品名やタイトルを完全に見えないようにする。
たとえば「鏡」という文字を就寝前に見ると、その文字が夢のなかで出てきて悪さをするというのだ。足のはえた「鏡」という文字が自分を追ってきて、その時は怖くて仕方がないらしい。
その話が面白すぎる。
興味を持った私は、彼女の話のなかにとことんまで入りこんでいた。昨日は終電という時間切れだったが、まだまだ聞き出したい。この人に自分の心理 状態を細かく書きなさいと言っている。
誰も体験したことない不思議な経験。
面白くないはずがない。
鬼塚忠 (作家・出版エージェント)
「アップルシード・エージェンシー」代表
http://www.appleseed.co.jp/
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