2013年04月20日07時41分掲載
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国際
【北沢洋子の世界の底流】ダーバンでBRICS首脳会談(その2)市民社会の批判「BRICSはアフリカを分割するな」
一概にして、市民社会は、BRICSに批判的である。したがって、「BRICS開発銀行」についても懐疑的である。すでにベネズエラの故シャベス大統領が提唱した「南銀行」案が動き始めていた。これには市民社会も賛成していた。
市民社会の視点から見ると、ブラジル、インド、南アフリカには、ダイナミックな市民社会が存在し、政府に対して、政策提言能力を持っている。
ダーバンでは、3月26日、アフリカ各地から市民社会の代表が集まって、「BRICSはアフリカを分割するな」というスローガンのもとに、「BRICS−from― below 」集会をDiakonia教会で開いた。
ケニアのKenya Debt Relief NetworkのWahu Kaaraは、「貪欲性は普遍的であり、それには南北を問わない」と語った。
BRICS開発銀行について、市民社会の様々な論調をまとめると、以下の4点に大別される。
(1) 経済的、社会的権利の侵害;たとえば、格差の拡大、貧困、病気、教育と健康へのアクセスの後退、公的サービスや住宅費の値上がり、労働者の組織化妨害、暴力のエスカレーションなどを指す。昨年12月16日、ニューデーリーで起こったJyoti Singh Pandey に対するレイプ・殺害事件、今年2月2日、南アフリカのBredasdorpで起こったAnene Booysenonn、同じく2月14日、プレトリアでのReeva Steenkamp に対するレイプなど、女性に対する暴力事件は後を絶たない。
(2) 政治的、市民的権利の侵害;たとえば、警察の暴力、治安の強化、軍事化、武器貿易、抗議デモの禁止、メディアに対する締め付け、情報隠し、活動家の投獄、拷問、家父長制の復活、同性愛者迫害、国家による虐殺などを指す。最近ダーバン近郊の悪名高いCato Manor地区の「警察殺人部隊」が50人以上の容疑者を殺害した、という事件が起こっている。
(3) BRICS経済間の格差の拡大;とくに内陸の周辺地域での資源の収奪、最貧国に対する「ワシントン・コンセンサス」の実施、などが見られる。これは貧しい国の政策能力を奪うことになる。
12年、BRICS5カ国はIMFに総額750億ドルを拠出した。南アフリカのPravin Gordhan蔵相によれば、これは、IMFに「 “もっとNasty”(悪者)になってよいという委任状」だったという。また中国、ブラジル、インドはWTOの
復活をはかっている。これはBRICSがより弱い国を貿易で搾取しようとする意思表示である。
(4) BRICSのエリートたちが推進する、消費主義、証券化、エコ破壊、温暖化、原発依存などの戦略を指す。;これらは、BRICSの個々の企業に利益をもたらすだろうが、一方では、BRICS経済や社会に危機をもたらすだろう。その例として、昨年8月、南ダーバンで起こった「Marikana虐殺」が挙げられる。これは「Lonminプラチナ鉱山」のインフラ整備のために、港湾、飛行場、石油化学工場の拡大として250億ドルの助成を受けたが、鉱山労働者や住民の反撃にあって、プロジェクトは「白い巨象」化してしまった。南アフリカの経済・社会にとって、大きな損失である。
市民社会は、BRICSが、今日、途上国が当面している以上のような緊急の課題を解決しようとしないことにいらだっている。
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Yoko Kitazawa
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