2013年04月25日12時49分掲載
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国際
【北沢洋子の世界の底流】アフリカ諸国に軍事介入する南ア(上) 中央アフリカ共和国での敗北「南ア兵は子どもを殺した」 北沢洋子
昨年12月、中央アフリカ共和国(RCA)で反政府勢力「Seleka(セレカ)」の攻撃が再発した。その支配地域である東北部から進撃を開始し、たちまち首都バンギに迫った。Fracois Bozize(ボジゼ)大統領は南アフリカ共和国を訪れ、軍事援助を懇願した。そこで、ズマ大統領は、今年1月2日、Mapisa-Nwakula国防相の反対を押し切って、Bozize独裁政権に、すでに派兵していた26人の訓練要員に加え、新たに298人の特殊降下部隊を派兵した。
1.南アの中央アフリカ共和国の内戦に派兵
Ebrahim Ebrahim前副外相は、派兵の目的を質問された時、南アが「ボジゼ政権に高性能の武器を提供したこと」を認め、その理由として、南アは、「とくにダイアモンドやウランなどの鉱物資源の権益を持っている。これには、ボジゼ政権の協力が必要だ」と答えた。これは、今まで、先進国が、旧植民地国に対して取ってきた政策と変わらない。
アフリカ諸国への南アの軍事介入は、これが始めてでない。ここ10年間、南アはアフリカ大陸において、最大の平和維持部隊の派兵国である。すでに南アは、スダンやマリに派兵している。
正規軍の派兵ではなくても、南アは軍事介入している。民主コンゴ共和国の東部で、500万人が虐殺されている最中に、南アのヨハネスブルグに本社を置く鉱山会社Anglo Gold Ashanti社は、虐殺の張本人の軍閥に、傭兵と武器の費用を提供した。また、ジンバブエ軍、中国企業、南ア企業が三者一体になって、数十億ドルものダイアモンドの権益を守るために、ムガベ政権を支援した。
中央アフリカ経済共同体(ECCAS)のメンバーであるガボン、チャド、カメルーン、アンゴラ、コンゴ共和国などが、総勢56人の軍隊をバンギに送っている。しかし、この人数では、シンボリックな存在にしか過ぎない。
南アは、RCAとの間で、派兵協定を2018年3月まで延長した。ズマ大統領は議会の質問に「派兵の費用は月に2,100万ランド(1ランド=10.82円)、18年までに総額12億8,000万ランド必要になる」と答えた。
2.南ア軍の敗北
ズマ大統領は、「南ア軍は、RCA在住の南ア国民の財産を守るために、国中に散らばって駐留している」と述べた。しかし、南ア軍は現地で歓迎されていない。
南ア兵が子どもを無差別に殺戮したからだ。ある南ア兵は、「銃撃戦が終わったら、そこに子どもが死んでいた。助かった子どもも母親に助けを求めて泣いていた。我々は子どもを殺しに来たのではない」と語った。
今年3月23日に起こった反政府軍との大規模な戦闘で、13人の南ア軍の兵士が戦死し、27人が負傷した。Selekaの総司令官Arda Hakouma将軍の発表では、南ア軍の戦死者数は35人となっている。
バンギから1.5km離れた郊外Boali の南ア軍の基地が攻撃に晒されたのであった。3,000人に上る反政府軍は、AK-47銃で武装していた。戦闘は9+13時間続き、最後に、南ア軍が白旗を掲げて投降した。
生き残った南ア軍は、戦闘の恐怖でトラウマになり、帰国した。彼らは政府に騙されたと思っている。政府は派兵に際して、反乱軍は「アマチュアだからたいしたことはない。RCA軍が援護してくれる。単に平和維持のためだ」と説明していたからだ。ところが、RCA軍は最初の一発の銃声で、われがちに逃げた。また約束された野戦病院も存在しなかったし、空からの援護爆撃もなかった。
現在、RCAに残っている南ア軍は25人に減った。代わりにフランスが250人を派兵した。しかし、フランスは、自国民に対して、悪名高いボジゼを守るために派兵するとは言えない。この部隊は「フランス大使館と自国民1,000人を守るという任務に限られる」と弁明している。
一方、南アは、CRA国境に近いウガンダのエンテベに基地を建設している。南アから軍輸送機が盛んに飛来している。しかし、この基地についての南ア政府の説明はない。
折から、ダーバンで、BRICSサミットが開催されていた。RCAでの南ア軍の敗北は、アフリカ大陸での南アの権威を大いに傷つけることになった。
国際問題評論家
Yoko Kitazawa
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/
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