2013年05月03日11時44分掲載
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核・原子力
【たんぽぽ舎発】「川内博史探検隊」ビデオを見て(連載2)東電説明と余りに違う内部 山崎久隆
発端は昨年の国会事故行において、東電に対し1号機の建屋内に立ち入り調査を行うことを通告したことから始まります。国会事故調は国会に設置されたものですから、国政調査権があります。従って立ち入りを「願い出る」立場ではなく「通告」する立場です。東電は「許可」する立場ではなく「便宜を図る」立場です。ところが、東電と事故調メンバーとのやりとりはまるで逆。どうしても立ち入りさせたくない東電は、あることないことを並べ立てて阻止しようとします。とはいえ国会事故調メンバーに対し「立ち入らせない」とは言えないので、何とか事故調側が断念せざるを得ないように持って行きます。そのため現場は「真っ暗」という説明を始めとして、如何に危険であるかを主張します。
東電第三者委員会が出した報告書「国会事故調への東京電力株式会社の対応に関する第三者検証委員会」には、そのあたりのやりとりがかなり詳しく書かれていますので、だいたいのことは分かります。
○「真っ暗」はウソでしたが、他にもウソが沢山あります。まず「内部は放射線量が高い」ですが、1号機は他と比べても低い方であり、さらにサーベイも行われているので線量が高い場所は分かっています。その場所を避ければ、被曝量を抑えつつ調査を行うことは難しくありません。実際に川内議員は二度立ち入りしていますが、1度目は5ミリシーベルト二度目は4ミリシーベルトであったと言います。たしかに一般人の年間被曝量の5倍をわずか30分で被曝するというのは低いわけがありませんが、調査で立ち入るならば、その程度は被曝することが前提となるし、それが嫌ならば立ち入らないでしょう。他の場所に比べて飛び抜けて高いというわけでもありません。敷地内にはもっと厳しい場所はいくらでもあります。
○瓦礫が散乱していて極めて危険というのは、4階フロアに限られます。そもそも爆発のあった5階部分は天井崩落により入れません。さらに4階も爆発があって瓦礫が散乱しているのは事実ですが、その下、つまり3階より下には瓦礫はほとんどありません。4階に限って危険であると言うべきです。
また、大物搬入口には手すりがなく、転落すれば21メートル落下するというのもウソです。手すりがないのは5階部分、むしろ大物搬入口の5階に手すりがないことの方が問題です。4階より下は瓦礫で破損しているとはいえ手すりは存在しますから、転落の危険性はほとんどありません。
グレーチング(鉄骨で作った格子状の歩道)がさびてぼろぼろなととも言っていますが、そのような形跡は一切ありません。
アラームメーターが鳴り続けて立ち入ったメンバーがパニックになるという口実も実際にはビデオではアラームは鳴るものの間欠的であり、むしろ聞き取りにくい場面もあったくらいです。
○「真っ暗」以外にも、東電の案内人は手にライトを持って入りますが、それがなければ暗すぎるのは、4階よりも下のフロアであり、4階部分は明るい日中ならばライトが無くても歩けないほどの暗さではありません。大物搬入口からの光が十分さしているので、足下が見えない場所は限られます。IC装置の間など、もともと光の届きにくい場所以外は、さほど暗くはありません。
1号機の覆いは、もともとコンクリートなど強固な素材ではなく、光を通す材質で作っています。さらに内部に照明をもうけ、明るく照らせるようにしています。
○考えるまでもないことですが1号機は将来、原子炉圧力容器のさらに下にまで落ちた燃料デブリを取り出す予定です。そのためには建屋を改造し取り出し作業に向けた設備を構築しなければなりません。真っ暗では作業が出来るわけもなく、そのために照度を考えた設計になっています。およそ東電職員でなくても知っている事実です。
これが真っ暗では入れないと説明をしたわけですから、始めから「国会事故調を妨害する」意図があったことは明白でしょう。
(次号に続く)
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