2013年06月10日09時21分掲載
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みる・よむ・きく
落合栄一郎『病む現代文明を超えて持続可能な文明へ』
著者が、過去数年、日刊ベリタに掲載したエッセーを纏めたものが、表題の書籍として本の泉社から出版された(292ページ、1800円)。安原和雄氏の別掲書評(みる・よむ・きく)と併せて読んでいただければさいわいである。落合氏は本書執筆の意図をつぎのように述べている。
現在の人類社会は、様々な意味で危機に瀕している。基本的には、新自由主義に基づく経済政策が所得格差の拡大を生み、無差別競争主義(グローバリズム)に基づく弱小企業/弱小経済国の破壊を導き、飽くなき利潤追求は、必然的に成長経済を継続させ、そして,経済そのものは、実体のない金融業が支配し、実態のないカネが、有限な地球上の資源の浪費を促進している。そして有限な資源を巡っての各国間のせめぎ合いは、やがては、世界大戦へと進展しかねない。この現状の継承は、少数富裕層(1%)による多数(99%)からの搾取、その奴隷的支配という構造を増々強固にし、地球資源は、急速に枯渇に向かう。
このような現状の問題点、とくに現在の人類文明の代表、アメリカ型文明の問題点、経済その他、人類が直面している様々な問題点を検討し、その上で、ではこれからすくなくとも数世代にわたって持続可能な文明とは,どのようなものであろうかを、今世紀末に実現しているであろう仮想的文明社会の具体的形態として描いてみたのが、本書である。
少ないスペースで、しかもまったくの普通人が描くもので、充分な議論はできていないが、問題点の指摘とこれからの方向付けの試みであり、これをたたき台として、多くの人々が議論し、人類の多数にとって現在より良い社会、孫やその後の世代でも、ある程度意義のある生き方のできる社会の形態を実現する方向を見出し、その方向に向けて自分達の社会や生き方を進めていくのに、いささかなりとも参考にと願うものである。
以下が目次
第1部 アメリカ文明の黄昏
1章 アメリカの帝国主義的心情と戦争意識
2章 アメリカ帝国主義の一形態—エコノミックヒットマンの物語
3章 非軍事面での帝国主義
4章 政治・戦争・新自由主義における「悪」
5章 アメリカ的文明の黄昏
第2部 人類の当面する基本的問題
第6章 法人の人格という問題
第7章 ペーパーマネーのあやふやさ
第8章 人口問題-1
第9章 新自由主義̶市場経済の退廃
第10章 成長経済からの脱却
第11章 宗教への妄信と選民意識
第12章 科学・技術信仰/専門化/教育など
第3部 アメリカ的文明・経済危機を乗りこえて持続可能な文明へ
13章 総論
14章 物質的・エネルギー的制約、物理的制約—気候変動など
15章 人口問題-2
16章 21世紀初頭の経済体系の問題—持続可能文明形成を阻むもの
17章 江戸期のモデル
18章 持続可能な未来文明のイメージ
19章 持続可能文明への道のり
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