2013年06月11日13時37分掲載
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核・原子力
日印の核(原子力)協定を結んではならない理由◆ <下> 人権問題としての核、エネルギー開発ならば別の支援がある 山崎久隆
核開発を進める国に特有の「人権抑圧」もまた、インドでは激しくなっている。原発建設が予定されている南インドのクダンクラム、西インドのジャイタルプールでは、住民による反対運動に対して治安部隊の弾圧が苛烈になり死者も出ている。核兵器と原発の非人道性に関する歴史的事実が、まだインド各地で記録され続けている。住民の声を無視し、情報を隠ぺいし、民主的な手続きを経ずに強権的に既成事実を積み上げる手法は、かつての日本の原発推進と全く同じである。
原発推進機関と規制機関が一体となって進められる実態は、原発事故の原因を作り続けていることに他ならない。
ここでも「福島第一原発事故の教訓」は無視され続けている。
少なくても日本が原発を輸出するというのならば、あるべき規制基準と規制体制(機関)が必要であることを説くことを最初にすべきであろう。「原子力輸出三原則」のような規制を日本側も課すべきであろう。少なくても相手国が、民主的手続きを無視して反対運動に武力弾圧を加えるなど、最初に「輸出できない国」の条件とすべきである。
また、「核兵器保有国及び核兵器開発を懸念される国」もまた、核廃絶を「国是」とする以上、「輸出できない国」でなければならない。
そして「適切な安全が保てる規制基準のある国」は三番目の条件となるであろう。
日本の原発が原因で福島やチェルノブイリ原発事故のような事故を引き起こせば、世界で「凶悪な」国の筆頭として日本が指弾されるであろう。そして莫大な賠償が請求され、それを支払うことになる。少なくても核産業を「成長戦略」の一角に据えるというのならば、この程度の「歯止め」がなければならない。そうでないと成長戦略どころか「国の破綻産業」になるだけだ。
エネルギー開発ならば別の支援がある
インドも石油資源は乏しいとされ、原発は急激に増大する電力需要を満たすためと説明されているが、本当にそうだろうか。
インドの電力生産の主力は石油ではなく石炭である。約55%に達する。石油は1%にもならない。もちろん、石炭による煤塵や窒素酸化物、硫黄酸化物は環境を大きく破壊していて公害問題となっている。その解決に原発は役立つだろうか。
答えは「ノー」である。
原発は計画立案から稼働まで最低でも10年はかかる。今の電力需要を満たすことは出来ないばかりか、その10年間は石炭火力で繋ぐことになる。しかも動いたからといって常にフル稼働できるわけではない。定期検査はもちろん、事故や自然災害で停止すれば長期間運転再開は不可能である。もっとも、人権抑圧国家ならば被曝をものともせず大量の労働者を危険な場所に送り込んで突貫工事をする
のかも知れないが、まさか、そんなことが許されるはずもない。
石炭火力を日本が開発する最高度の燃焼効率の火力に置き換えれば、ほとんどそれだけで当面増大する電力需要はまかなえる。置き換えだから、新たな立地場所はいらない。置き換えだから、送電網などのインフラも既存の場所で高性能なものに置き換えるだけで良い。実は送電網の新設は発電所の建設以上に巨額の投資が必要なのだ。
置き換えだから、燃料輸送設備もそのまま使える。核燃料を運ぶためには、周辺の道路整備や港湾整備も必要になろう。あるいは警備用の武力も。
そして何よりも、発電所のリプレースなので2年程度で再稼働できることだ。
熱効率はインドの平均31%に対し、日本の最高レベルならば65%、現状稼働してる平均的なものであっても50%である。同じ出力ならば石炭需要は半分で良い。
同じ石炭を燃やすならば、二倍の電力生産が可能である。これで全インドの石炭火力の置き換えをすれば、それだけで発電設備の上では電力需要問題はなくなる。
もう一つは30%もある送電ロスを減らす技術協力だ。これで同じエネルギーから倍の電力が利用可能となる。
改めて言う。原発輸出はエネルギー問題などではなく、核拡散問題だ。
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