2013年06月29日21時33分掲載
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中東
キッシンジャー元米国務長官「シリアは分割されるべきだ」〜ヴォイス・オブ・ロシアより〜
ロシア国営放送から中東のシリアを見ると、こんな記事が紹介されていた。アメリカのキッシンジャー元国務長官が「シリアを分割せよ」と主張しているというのだ。http://english.ruvr.ru/2013_06_29/Splitting-Syria-is-the-best-possible-outcome-Henry-Kissinger-2678/
その論旨はシリアの紛争の原因となっているものは第一次大戦後に当時の宗主国フランスが引いた国境線にある、とする。同じ問題は英国が宗主国だったイラクにも言える。双方とも英仏に都合のいいように引かれた国境線であって、住人達の便宜をはかったものではない、という論理だ。
もし、シリアを解体して分割すればアサド政権も延命でき、反政府勢力になっているスンニ派にとっても独立が果たせる、みんなにとっていいことになるという。最初は民主化のデモから始まっていたにせよ、現在のシリアの戦いは<独裁政権VS市民>という民主主義化の構図ではなく、単なる異なる民族間・宗派間の戦いに過ぎないからだという。
ヴォイス・オブ・ロシアはキッシンジャー元国務長官の声を伝えた上で、こうした声が政府外の大物から出てきているのは現在、アサド政権軍が勝利間近に来ており、米国が描いた反政府勢力側の勝利のシナリオが破綻したからであると推測している。
■Henry Kissinger: Balkanized Syria Best Possible Outcome
(キッシンジャー氏「シリアは分割するのが最善の策」)アレックス・ジョーンズのINFOWARS.COMより。
キッシンジャー氏のコメント映像あり。(*司会者の前置きが長いので20分くらいから見るのがよいだろう。)
http://www.infowars.com/henry-kissinger-balkanized-syria-best-possible-outcome/
バルカナイズ(’balkanize')という単語には「小さな敵対地域に分ける」という意味がある。単に分割するだけではなく、互いに牽制しあう敵対構図が裏にある言葉のようだ。用語の起源は互いに小勢力が対立し合ったバルカン半島の地政学的歴史がある。イデオロギーによるのではなく、「バランス・オブ・パワー」をキーワードにしてきたリアリズムの政治学者、キッシンジャー氏らしい言葉である。
■H.キッシンジャー著「外交」http://www.nikkanberita.com/images/201306/201306292300476.jpg
欧州近代の「力の均衡=バランス・オブ・パワー」の国際政治から二度の世界戦争を経て米国が超大国化し「世界の警察」になるまでの過程を分析している。
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