2013年07月28日16時11分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201307281611320

安倍政権を検証する

スノーデン氏の帰国をうながす米司法省 〜死刑にはならないだろう〜内部告発・情報漏洩と処罰そして「秘密保全法案」〜

   米国家機密の漏洩で米国からパスポートを無効にされたまま、モスクワ空港に足止めを受けている元NSA職員(コンサルタント)のスノーデン氏のその後の状況が報じられている。今もスノーデン氏はモスクワに留まり、亡命先を探しているようだ。この状況に対し、米司法省は死刑になることはないだろう、と帰国を促している。 
 
  フランスのルモンド紙によると、米司法長官のエリック・ホルダー氏はもし帰国しても死刑にはならないだろうし、拷問されることもない。アメリカに帰国するならそのパスポートもまだ使えるということを記した書簡をロシア政府の司法大臣宛てに送ったという。これはスノーデン氏がロシアに亡命を求める理由を失わせる狙いがあるのではないか、と見られている。書簡によればスノーデン氏は今も米市民であるそうだ。http://www.lemonde.fr/technologies/article/2013/07/26/les-etats-unis-ne-requerront-pas-la-peine-de-mort-contre-snowden_3454335_651865.html 
  今、世界で、そして日本で内部告発とその処罰が大きなテーマになっている。日本の場合は安倍政権がこの秋にさっそく法案を通そうとしている「秘密保全法案」である。スノーデン氏の内部告発、そして少し前に話題となったウィキリークスについてだが、国家による問題行動を知らしめたこれらの内部告発に対して日本のメディアは喝采を送ったのではなかっただろうか。 
 
  その当時筆者はウィキリークスのような何十万件もの大量のデータを一気に取り出してメディアにどっと公開し、問題個所を選別してみせる手法は問題ではないか、と本紙に指摘した。内部告発は大切にされるべきだが、一定の絞りをかけないともはや国は秘密を有する意味もなくなるのではないか、という考えからである。 
 
  国の外交に秘密はつきものだし、それを事前にメディアで公開されれば外交交渉にも支障を来す。国防上の機密事項もあるだろう。しかしながら、今回の安倍政権の法案に筆者が反対しているのはこの法案が先ほどのウィキリークスなどの手法とは真逆になって、今度は何でも秘密にする、という方向につっ走っていると思われるからだ。 
 
  政府は一定の秘密を有するものだと考えるが、しかしそれが秘密に値するか、検証される必要がある。もし政府が問題のある行動を行った時、それを暴いて報じるのはメディアの使命であり、それができないなら報道は名ばかりのものになるだろう。第二次大戦中、日本の報道機関は大本営発表の情報を検証すらせず、新聞やラジオで流していた。当時の国民には戦争の実情はまったく知らされていなかったのである。秘密保全法案がもし通れば日本がいつか戦争になった場合の戦況すら「特別秘密」に指定されれば報道できなくなる可能性がある。いや報道されたとしてもその情報は政府公認のものだけになるだろう。安倍政権は改憲の前に、極めて重大な法案を通して、その敷石にしようとしているのではないだろうか。 
 
 
■安倍政権が提出する「秘密保全法案」(仮名) 〜処罰は公務員だけではない〜国民が知るべき情報は国が決める 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201307271738436 
 
■ジャーナリストか、活動家か。 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201307030941273 
  「今回、スノーデン氏がNSA(米国家安全保障局)の極秘データを託したジャーナリストの1人がガーディアン紙の米担当記者、グレン・グリーンウォルド(Glenn Greenwald)氏だった。グリーンウォルド氏は弁護士でもあり、個人のプライバシーを護る<活動家>でもあった。だからこそ、スノーデン氏は彼に情報を託したのだった。米当局はエドワード・スノーデン氏に今後刑事訴追をかける可能性があるが、同様に<活動家>グリーンウォルド氏に対しても国の秘密を公開したことを手助けした罪が課せられる可能性もささやかれているようだ。果たして、彼はジャーナリストなのか、活動家なのか。 
 
  そんなことから米国ではジャーナリストと活動家の間に線はあるのか。あるとしたら、どこなのかと言ったことが話題になっている。・・・」 
 
■ウィキリークスの理想は?(2010年12月) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201012020048214 
  「非合法で入手した外交公電を大量に公表することは本当によいことなのだろうか。今回は米政府の外交情報だが、中国や日本、あるいは韓国や北朝鮮の外交公電がリークされた場合も、我々は肯定できるのだろうか。政治的な右とか左とかはこの際関係なく、である。 
 
  ウィキリークスの大量の情報公開を肯定する論理は一体どこにあるのだろうか。政府が秘密を一切持たないようになることが理想なのか。・・・・」 
 
  2年半前に情報の大量漏洩は問題ではないか、と指摘したが、あれからわずか3年足らずで今度は報道の自由が奪われようとしている。報道の自由が奪われた国々、旧ソ連や旧東欧諸国の末路を見ればその怖さがわかるだろう。政府や官僚がどんなに優秀だったとしても政策を間違いうる、ということである。だからチェックされるシステムが必要であり、そのために自由で政府から独立した報道が必要なのである。 


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