2013年08月01日19時13分掲載
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コラム
エイミー・ジョー・ジョンソンの映画作り 村上良太
20年来の東京在住者でラジオの国際ニュースキャスターをしているフランス人の友人、フィリップ・ヴァルドア(Philippe Valdois)はデジタルメディアに詳しい。先日、「これを見てくれ」、とアイパッドを開いた。クリックするとそこに流れた映像は歌だった。
一人の女性がキッチンのテーブルから、フィリップの名前を語りながら、ギター片手に歌を一曲披露。歌の最後にヴァルドアという友人の苗字も語り、感謝を込めた。「エイミー・ジョー・ジョンソンが僕の名前入りで歌を歌ってくれたんだ。感激したよ。僕は第一号だったんだ。」
僕はその名前にまったく無知だったのだが、フィリップによると、エイミー・ジョー・ジョンソンはアメリカのシンガーソングライターであり、女優でもある。アメリカで「パワー・レンジャー」という人気テレビシリーズにレギュラー出演、カナダではテレビシリーズ「フラッシュポイント」にレギュラー出演するなど、北米で非常に人気があるのだそうだ。
そんなセレブが東京のフィリップに向けた歌を披露したのは彼がお金を送金したからだ。エイミー・ジョー・ジョンソンは短編映画の自主制作に着手し、自ら監督・プロデューサーを兼ねる。そこで資金集めに使ったのが「インディーゴーゴー(Indiegogo)」というインターネットの拠金システムだった。
そのサイトに映画製作の趣旨を書き、賛同してくれる世界中の人からペイパルなどの送金システムを通してお金を集める。それも下は10カナダドル(最近のレートではほぼ米ドルと同じ)から。日本円にして1000円足らず。10カナダドルだとウェブサイト上に感謝が書き込まれる。25カナダドルだと映画のサイン入り絵葉書がもらえる。100カナダドルだとサイン入りシナリオが、150カナダドルだと名前入りの歌を歌ってもらえる。こんな風に基本的には少額の寄付を募り、寄付額が増えるに応じて特典をUPしていく。
「僕の場合は500カナダドルを送金したから、歌とサイン入り脚本と、インターネットムービーデータベース(IMDb)に記載されるアソーシエート・プロデューサーのタイトルが特典だった。」
資金集めと言うと、投資とリターンという発想に縛られがちだが、このシステムは寄付に対する謝礼というものだという。ペイパルなどの国際送金システムと、ネットで拠金するシステムを運営するインディーゴーゴーに一定の手数料を払う。システムの利用者は映画制作者だけではない。たとえば暴漢に襲われたインドの女性の治療費を拠金する、など様々なユーザーがいる。フィリップによると、2年前からこうした「クラウドファンディング」と呼ばれる拠金方式が行われるようになったという。ウェブサイト上の掲示板には募集締め切り日時と目標額の何%まで集まったかが刻々と掲示される。また掲示板に準備の進行状況などが適宜加筆されていく。
さてそのエイミー・ジョー・ジョンソンの拠金の目標額は25000カナダドルだったが、何と46169カナダドルが集まった。だいたい450万円。目標額の倍近い。でも映画製作という割には意外とつましい印象も。しかし、長編ドラマを撮影するならともかく、短編映画でしかも旗振り役の女優が自らメガホンを取って主演するのだから、実現性が高いということだろう。
このお金でこれから製作に入る短編映画「LINES」は、不自然なまでに若く見えることが求められる現代社会を風刺するコメディだという。脚本を書いたのもエイミー・ジョー・ジョンソン自身だ。彼女が現在暮らしているカナダで制作される予定だ。
■Indiegogoに掲示された映画「LINES」の資金集めのサイト
http://www.indiegogo.com/projects/lines
■エイミー・ジョー・ジョーンズのウェブサイト
http://www.amyjo.com/
1970年、米マサチューセッツ州ケープコッドに生まれる。2005年以来、カナダに移住。
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