2013年08月28日13時10分掲載
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核・原子力
「フクシマ」は終わっていない(1)金曜日の官邸前で人々は声を上げ続ける 上林裕子
目くらましのアベノミックス効果で経済が上向きつつあるので国民の関心は福島を超えて経済に移った、とマスコミのアンケート調査が伝える。いまだ福島を離れて15万人の人々が避難生活を送っているが、国は放射線レベルが下がったから、故郷に帰れという。しかし、子育てできるほど放射能レベルは下がってはいない。おまけに高濃度汚染水がタンクから海へ流れ出し予断を許さない状況だ。「われわれの生活は、まだ原発事故の中にある」と被害者はつぶやく。「フクシマ」はまだ何も解決しておらず、2年半たった今も、「あたりまえの暮らし」を取り戻すためのたたかいは続いている。
地下鉄・国会議事堂前の改札を抜け、地上への階段を上がっていくと次第に人々の声が聞こえてくる。今日はどのくらいの人が来ているだろうか、知人や友人に会えるだろうか…階段を登りきるとシュプレヒコールの声に包まれる。今日は金曜日、官邸前はすでに人々が集まっている。
毎週金曜日の官邸前行動。一時期のように10万、20万人というほどの人ではないが、今でも毎週3000〜4500人が参加する。組織や動員されたわけではなく、友達や家族と、あるいは1人で、それぞれが自分のスタイルで参加している。手作りのプラカードを掲げ、すずや太鼓の鳴り物を鳴らし、シュプレヒコールに唱和する。1人1人の思いはそれぞれ違っても、「原発はいらない」「子供たちを守りたい」との思いは共通だ。
人の輪を離れてたった一人でプラカードを掲げる人や、一人離れた場所でブブカを吹く人、数人で灯篭を囲み太鼓を打ち鳴らしながら踊る人、「核などいらねえ」とうたった忌野清志郎の歌を歌うグループなど、自分たちのスタイルで「反原発」を表現する。
毎週6〜7人で楽器を奏でながら反原発の歌を歌う「日本音楽協議会」。オリジナルソング「望郷」は、福島の人でなくとも胸に迫る歌詞だ。
1.戻れるか果たして いつの日か戻れるか
放射能降り積もる わが故郷 (戻れるか から繰り返し)
町を離れ村を追われて 真夜中の道に
車を連ねて 避難先探し求める
数万の人が ただあてどもなく
戻りたいでも戻れない わが土地と我が家でも
変わりなく故郷が そこにあるのに
(2番以下略)
ステージは官邸前、国会正門前、国会正門前の通りをはさんだ向かい側にファミリーコーナーの3カ所がある。金曜日の同じ時間に、日本各地でも同じような集会が行われている。北海道・泊原発や愛媛の伊方原発、九州の玄海原発でたたかっている人が官邸前を音連れスピーチに立ち、現地の状況を伝える。福島の人が参加し、思いを伝える時もある。
「今日、初めてステージに立ちました」と、官邸前に来るようになった自分の思いを話す人、商店街の自分の店に「脱原発」ののぼりをたて1人で活動している様子を紹介する人、自分の地域で行われるイベントの案内をする人など、ステージで呼び掛けるメッセージは様々だ。
3つのステージをめぐって「反原発自転車隊」が車道を駆け抜ける。金曜夜の観光コースになったのか、はとバスやロンドンバスから観光客が物珍しそうにのぞいている。
毎週金曜日の官邸前は、原発のない社会を望む人々の思いで、力強くしなやかにつながっている。
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