2013年08月29日06時11分掲載  無料記事
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TPP/脱グローバリゼーション

TPP交渉 日本は一方的に譲歩するしかない(2) 日米協議は「TPPプラス協定」でアメリカが満足するまで続く ジェーン・ケルシー

 TPPウォッチャーとして国際的にも有名なニュージーランド・オークランド大学教授のジェーン・ケルシーさんがこのほそ発表した「TPP協定における日本・自民党の国益条件に関する問題提起」と題する論文で、同教授はTPPと並行して進められている日米協議は、TPP妥結後もアメリカが満足するまで続き、その間TPPは日本に適用されないと指摘している。日本にとってTPPは二層状態の条約になるというのだ。すなわち、アメリカと日本を除いた全参加国によるTPPと日本・アメリカ間の“TPPプラス協定”の二層である。(翻訳:池上 明・田中 久雄/監修:廣内 かおり) 
 
◆二国間交渉と多国間交渉との関係 
 
 TPP本交渉と、自動車、農産物の市場参入、非関税措置(NTMs)に関するアメリカと日本の二国間交渉には実質的な重複がある。これら二つの交渉の関係は明確ではなく、部門や規則によっても異なる。 
 自動車と農産物に関する二国間交渉の結果は、TPP協定の最終版に含まれると考えられ、TPPの紛争解決手続きを通じて施行されるものとなるだろう。 
 
 非関税措置に関する二国間交渉の法的位置づけは若干明確さに欠ける。米通商代表部の概要説明には、二国間交渉の結論に従って処理されねばならない問題があ げられている。また非関税措置交渉の結果は、協定がアメリカと日本との間で施行される時点までには実施されなければならない、とも述べている。 米通商代表部の概況報告書は、非関税措置の交渉結果はTPP自身と矛盾してはならないだろうが、法的拘束性のある合意、書簡の交換、及び新たなまたは修正された(日本国内の)規制または法律を通じたものなどを含む方法によって「謳われる」こともあるだろうと示唆している。 
 
 したがってアメリカと日本との間で合意される規則は、日本と他のTPP加盟国間で適用されるものとは異なってくるだろうと思われる。他の国が同じレベルの譲歩を日本から引き出したいと望み、またいかなる最終的な合意内容に対する履行及び遵守のコストが増加する場合には、その交渉を複雑化させるものとなろ う。カナダはすでにアメリカに対して、日本と行う自動車及び他の問題に関する二国間交渉がどのようにカナダに影響するかについて明確化するように求めてい るが、公式の回答は出されていない。 
 
◆並行交渉のタイミング 
 
 米通商代表部によれば、二国間交渉は2013年7月23日に日本がTPP会合に参加する時に始められ、参加国間のTPPに関する多国間手続きと並行して行われることになる。この交渉の決着時期は明確になっていないが、米通商代表部は次のことを公表している。 
 
a)アメリカは非関税措置に関して、TPPが他の参加国と決着した「後に」も日本との交渉を継続することがありうる。 
b)自動車と非関税措置については同時に妥結されること。「これらの問題全てを決着しうることなしに日本との間でTPPを決着させることはない」。 
c)非関税措置交渉の結果は、協定がアメリカと日本との間で施行される時点までには実施されていなければならない。 
 
 つまり、日本とアメリカの合意が二国間交渉において達成されるまで、TPPの全体交渉も続けられるということである。さらに、TPPに含まれる広範な問題 に関して日本とアメリカで別の付帯的合意がなされることを意味する可能性が高い。他のTPP参加国ならどちらの方法も好まないだろう。 
 
 先に(注)で述べたように、アメリカ国内の手順によるとTPPがアメリカと日本の間で施行される前に、アメリカと他のTPP参加国との間で施行されるというリスクがある。 
 
 要するにこれは、アメリカが農産物及び自動車に関する二国間交渉の結果に「満足」し、 非関税措置の交渉による結論と一致すると確信できる内容を日本が履行するまでは、TPPの下でのアメリカの義務は日本に対して実施されないことを意味して いる。結局、交渉結果に対する拒否権をアメリカに与えているのだ。まさにアメリカ-中米自由貿易協定(CAFTA)で起きたことである。アメリカが満足するような条件を満たした参加国は、CAFTAの恩恵を受けられることになった。参加国のなかには自国の国内承認手続きが終わっているにもかかわらず、何年間もCAFTAの恩恵を得られなかったところもあったのだ。 
 
 さらに、このような二国間交渉の中で、より幅広く交渉されるTPPでアメリカが達成できるよりもいっそう強力な約定をアメリカが日本に要求できることを意味している。言い換えれば、日本はこの二国間交渉の結果としては他のTPP加盟国よりも強い制約に直面しているようだ。 
 事実上、二層状態の条約になるだろう。すなわち、アメリカと日本を除いた全参加国によるTPPと日本・アメリカ間の“TPPプラス協定”の二層である。 
 
(つづく) 


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