2013年08月30日15時13分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201308301513095
米国
米国の反戦デモ イラク戦争の二の舞はごめんだ! 〜アメリカのウェブサイトから〜戦争の連鎖を止めよ
ニューヨークのタイムズスクエアで8月29日、シリア戦争に反対する反戦デモが行われた。デモの参加者は化学兵器をシリア政府が使ったかどうか定かではないことに言及し、イラク戦争の時の大量破壊兵器のケースと同じだ、とオバマ政府の姿勢を批判しているという。(CBSニューヨークの報道より)
http://newyork.cbslocal.com/2013/08/29/protesters-in-times-square-u-s-should-butt-out-of-syria/
「戦争が人命を救うと本気で思っているの?」
「シリアに首を突っ込むな。我々が欲しいのは仕事だ。我々が欲しいのは平和だ。もう中東から手を引こう」
こんな呼びかけをしているという。
一方、反戦で知られる元民主党下院議員のデニス・クシニッチ氏は国会の承認のないシリア攻撃は憲法違反だと批判している。さらにイスラム原理主義勢力と闘っているアサド政権を空爆することはアルカイダを支援することに他ならない、とも言う。
http://rt.com/usa/us-syria-al-qaeda-092/
アサド政権攻撃はアルカイダを支援することだ、という見方は一定の広がりを持っており、英国のインディペンデント紙の著名な中東専門記者ロバート・フィスク(Robert Fisk) 氏も、オバマ政権は初めてアルカイダと同じ側に立った、と指摘している。そもそも米国が中東に足を踏み入れるきっかけとなったのがアルカイダによる9・11同時多発テロだったが、ここに来て、米軍とアルカイダが味方になっている、という蛇がとうとう自分の尻尾に噛みつく状況が起きた。
また反戦ドットコム(AntiWar .COM)は「シリア反政府派がイスラエルに支援を要求」との見出しを掲げた。この記事によると、シリア反政府派はイスラエルに<中立はやめて、我々に手を貸せ>と要求しているという。イスラエルに米国がシリア戦争を始めるように促せと要求し、その見返りに、シリア政府が倒れ、我ら反政府派が政権についたときに<イスラエルと新生シリアをいい関係にする>、と言って誘っているという。
http://news.antiwar.com/2013/08/26/syrian-rebels-demand-israeli-support-for-us-war/
この反戦ドットコムは政治の左右に関係せず、たとえば共和党のリバータリアンと呼ばれる、海外の紛争に加担しない方針を是とする人々にも読まれているという。
アメリカの中で<もう戦争はこりごりだ>という声が上がっているが、日本の新聞は報じているだろうか。
ちなみに元米国務長官のキッシンジャー氏はシリアの現状をこれは<独裁政権VS民主主義>の戦いではなく、政権の座を争う宗教セクト間の争いに過ぎないと看破した。だから、現政権が転覆されて別の政権ができても、その時弾圧される側になったアサド政権支持派による政府攻撃が始まり、さらに原理主義勢力の参画もあり、出口のないイラク戦争の二の舞になる可能性があると指摘しているのだ。ここからシリアの分割案が生まれており、アサド派と反アサド派の勢力圏で新たに国境線を引き直そう、とする案である。
<シリアの紛争の原因となっているものは第一次大戦後に当時の宗主国フランスが引いた国境線にある。同じ問題は英国が宗主国だったイラクにも言える。双方とも英仏に都合のいいように引かれた国境線であって、住人達の便宜をはかったものではない>
米国だけでなく、かつてこの地域で勢力を争った英国とフランスがシリアの行方を注視している。それをロシアとイランが阻止しようとしている。いよいよ大国は第一次大戦(1914-1918)以来の中東再編に着手するのだろうか。日本政府は早々と英米仏側につくことを決め、その決意と見えるアサド政権批判を世界の聴衆を前に行った。
■キッシンジャー元米国務長官「シリアは分割されるべきだ」〜ヴォイス・オブ・ロシアより〜http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201306292133146
■米国のリビア介入論争〜オバマ大統領を訴えた米議員たち〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201111291225272
■イスラエルの戦略家が提言「アサド政権軍を空爆せよ」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201209142202055
「シリアの内戦で、アサド政権を空爆せよ、と訴えているのがイスラエルの戦略家Amos Yadlin氏である。Yadlin氏はテルアビブ大学にあるthe Institute for National Security Studiesのトップであり、 イスラエル軍情報部の元トップである。Yadlin氏は9月6日、英紙インディペンデントで、シリア軍を空爆するのはイラク戦争やアフガン戦争に費やしたような犠牲を要しないと説明している。地上軍投入の必要すらなく、空からの攻撃だけでアサド政権崩壊には十分だとする。Yadlin氏が成功モデルに掲げるのがコソボ空爆とリビア空爆である。」
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。