2013年09月21日11時14分掲載
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コラム
パリの散歩道 満月夜の大宴会 村上良太
当地では週末になると、あちこちで宴会が始まるようだ。先週も隣に何人か集まって宴会が始まり、歌を歌っていたが、何時間か過ぎ、宴会が終わって階下の部屋に引き上げたのだろう、ブザーを鳴らしまくり、扉をガンガン叩く。その叩き方はまさに暴力的だ。
今夜は満月らしい。「らしい」というのは月を見ることが難しいからだ。当地で日が沈むのは午後9時近いが、その頃はすでに部屋に引き上げている。そして、団地の窓から夜空を仰ぎ見ようとするのだが、団地の棟と棟の狭間の長方形の空間しか夜空が見えなくて、そこに月がこないと月を見ることができないのだ。
夜更けてベッドで眠っているのを覚まされたのは午前3時すぎ。今日は隣でなく、真上の階で集まりがあるのだろう。この建物、建てられたのが1948年で床はフローリングになっている。人が歩くとミシミシその音が階下に響く。今夜は人の足音だけでなく、もっと小刻みで素早い動きをする「存在」がいるらしい。ポコポコポコポコッ、ポコポコポコポコッと弾ける音がする。
想像ではダックスフンドか、小型犬の足音だ。吠える声は聞こえない。なぜかティム・バートン監督のアニメーション的な世界が浮かんでくる。骸骨犬が走り回っているような・・・。姿が見えないからだろう。
僕も犬を長年飼っていたが、犬は基本的に夜は眠るものだ。しかし、午前3時すぎに走り回っている、というのは犬が宴会する人間たちに付き添って、人を喜ばせる道化師としての役目を懸命に果たしているからだろう。これには笑いを覚えた。
僕の部屋にはテレビがない。ラジオは近くのインド人の商店で買ってきて置いた。ラジオは始終つけている。入居した当初は電気工事中で夜になると僕の棟は右も左もわからないほど真っ暗だった。ミシミシ軋む階段を上り、暗闇の中を鍵を握りしめて鍵穴を手探りして開けようとする。でもなぜかあかない。指で鍵穴に手を当てる。確かに鍵穴のはずだが・・・。すると、ドアの向こうから「何なの?」という女性の声がした。階を1つ間違えてしまったのだ。下の階では女性が暮らしているようだ。
当地では4階を「3つめの階」(troisieme etage)と言う。3と書いていたら4階なのである。一階はRC=rez-de-chausse(レドショッセ)と言う。こういうことは一応頭に入っていたのだが、真っ暗闇で酒も多少頭に入っているとつい間違える。
当地では団地の住民同士で付き合いがある感じだ。アパートの住人たちの友情を描く「C階段」というフランス映画を見たことがあるが、同じアパートの住人同士で近所付き合いしている感じがする。といってもみんながそうしているわけではないのだろうが。
***階段には灯をつけるスイッチがあることを後で知った。自分で点灯しなくてはならないのだった。
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