2013年10月01日11時22分掲載  無料記事
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国際

【北沢洋子の世界の底流】ルーマニアで何が起こっているのか?  金鉱山とシェールガス開発阻止に立ち上がった人々

 9月1日、ルーマニア全土25都市で、露天掘りの金鉱とシェールガス鉱山開発に反対する街頭デモが起こった。ルーマニアの社会学者はこれを「新しいルーマニアの社会運動の始まり」と評した。 
 同時に、これに対する連帯のデモが、20以上のヨーロッパとカナダの都市でも起こった。 
 
◆ヨーロッパ最大の露天掘り金鉱開発 
 
 これまで15年間、市民の反対運動によって、カナダの金鉱会社がルーマニア西部のApuseni山脈で金と銀の採掘計画に反対し、これを阻止してきたのであった。ルーマニアでは、この会社は土地の名をとって「Roeia Montaneゴールド社(RMGC)」と名乗っている。 
 
 もしこれが実現すると、ヨーロッパ最大の露天掘り鉱山となるだろう。この場合、Roeia Montane村を村ごと移転させ、村を取り巻く4つの山が露天掘りの地域となる。 
 金の採掘にはシアン化が用いられるので、最後には、この地域はシアン化の湖となるだろう。専門家は、この鉱山の埋蔵量は少ないと見ている。だが、たった20トンの金と約200トンの銀の採掘のために約20万トンのシアン化が使われると計算した。 
 
 したがって、この鉱山開発がもたらす環境破壊は計り知れない。それはまさに大災害と言うべきだろう。ルーマニア、ハンガリー、ドナウ川、そして、黒海に至るまでの全地域が、有害物で汚染される。 
 
 抵抗する住民の退去には、鉱山会社が雇っている武装警備員が動員されている。勿論、これは、国家の名が使われる。そして、“公共の利益”のためにという理由が使われる。この問題に関する限り、マスメディアは買収され、政府も同じく買収されている。8月27日、政府は、この鉱山開発を承認する法令を作成した。あとは、議会の承認が残っているだけだ。政府は、このカナダの鉱山会社が過去14年間、数知れない不法な活動を繰り返してきたことを認めている! 
 
◆シェブロンのシェールガス開発プロジェクト 
 
 これと同時に、シェブロン社が、ルーマニアの地下のシェールガス採掘を計画した。これも住民の強い抵抗で実現できずにいる。 
 
 シェブロンは、欧米の巨大石油会社の1つで、すでに、米国とカナダで、石油に代わる新しいエネルギーとして、米国やカナダで発掘が進んでいる。 
 
 すでに同社の不法行為は摘発されている。ある村では、村の住民が、彼らの家の地下に不法に据え付けられた爆発の導火線のワイヤーを盗むといった形の抵抗を行っている。村人のなかには、会社が雇ったごろつきに襲われた。金鉱開発に雇われたのと同じ武装警備員もいる。 
 
 シェールガスの採掘は、ルーマニア全土に及んでいる。ということは、ルーマニアの多くの地域が汚染されることになる。開発派はルーマニアのロシアの天然ガスへの過度の依存を避けるためにシェールガスの開発は必要だという。しかし彼らは、すでにルーマニアが天然ガスを生産しているヨーロッパの3カ国の1つだと言うことを隠している。そして、ルーマニアの場合、自国に必要な天然ガス以上の量を生産している。そして、この天然ガス採掘会社は民営化されているので、EUの有力国に安く売っている。一方、ルーマニアは高い天然ガスをロシアから買っている。 
 
 村人は以上のことをすでに知っている。村人の多くは、シェブロン社が採掘を始めるならば、平和的な抵抗をやめ、農機具で抵抗すると叫んでいる。彼らのスローガンは、「我々の土地を守る」「企業のサボタージュ」などである。そしてこの闘争の通信地であるBarlad 市では、人びとは街頭に出てデモを始めた。 
 
◆ルーマニアの人々は、立ち上がった 
 
 これまで、ルーマニアでは、自分たちが声を上げ、変革することが出来るということを忘れていた。多くの人が貧困と腐敗を受け入れ、団結して戦うことができることを忘れていた。シェブロンとRMGCが、彼らの目を覚まさせたのだ。 
 
 現在、ルーマニアの人びとはいわゆる「89年革命」以降の24年間に起こってきたことに怒っている。腐敗と不法な政治制度と経済搾取の制度に怒っている。国内には、野蛮な資本主義が跋扈している。人びとにとっては、より文明化した法律が守られている国に移住することでしかなかった。法律によって、盗みと破壊が認められている国では何ができるだろうか。 
 
 ついに9月1日、ルーマニア全土で、何万人もの人びとが、立ち上がった。イスタンブールのゲジ公園からの連帯の挨拶も届けられた。9月1日以降は、人びとがテントを持って集まってきた。町の中心部のClujでは、集会が開かれた。多くの独立ジャーナリストたちが記事を書き始めた。ネット上には、記事だけでなく、写真やビデオが載った。記事ばかりでなく、対話、意見、主張が載りはじめた。 
 
 マスメディアは、Roeia問題は解決したと報道した。このようなデマでもて、運動を破壊しようとしている。 
 
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国際問題評論家 
Yoko Kitazawa 
url : http://www.jca.apc.org/~kitazawa/ 


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