2013年10月05日05時59分掲載
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文化
ベルギーの人形劇団 TOF 〜切れ味が鋭い大人の笑い〜
前回、フランス東部、シャルルビル=メジエールの国際人形劇フェスティバルについて報告した。その時参加していた個性的な人形劇団の1つを紹介しよう。
ベルギーの「TOF」だ。1987年から人形劇を上演している劇団で、海外公演を盛んに行っているが、本国ベルギーでは首都ブリュッセルの国立劇場などで公演している。TOFとはベルギーの言葉で「すごい」とか「偉大な」という意味だそうだ。シャルルビル=メジエールで今年上演して大好評だったのが「アトリエで」(Dans L'atelier)という作品。
人形が自分の顔を自分で作ろうとする。人間なら生物学的なDNAとは無縁に自分の顔を自分の思い通りに作れたら、と思うことも一度や二度ではないだろう。舞台では二人の女性人形遣いが1つの人形を操る。
人形が自分の顔を作り始めると、予想外のトラブルが。人形が自意識を持ちはじめて、だんだん操られることを拒否し始める。このあたり、ぐっと引き込まれる。一連の演出が見事である。
座長はアラン・モロー(Alain Moreau、1962-)氏。映像の中で人形を操っている二人の女性はモロー氏が集めてきた才能のあるスタッフだ。
モロー氏は9歳の年、自宅で父親が持っていた人形をいじっているうちに人形劇に目覚めた。家の中に、父親が人形を何体か持っていて大きな箱に入れていたのだそうだ。やがて10代になると兄弟で出し物を作るまでになった。その後、ブリュッセルの王立コンセルバトワールでドラマを学んだ。やがて「 le tour du Bloc」という人形劇作品を作り、これをもってベルギー全国を公演して回った。以後、世界中の劇場で創作人形劇発表している才能のある人である。
今回の出し物は今年2月、ブリュッセル国立劇場がモロー氏に人形劇のワークショップを開くように持ちかけた時に創作したもの。最初は5分の予定だったが、面白かったためにどんどん長くなって18分の作品に成長した。
今回の公演の人形遣いは二人の女性。エミリー・プラゾレス(Emilie Plazolles)氏。南仏の出身。ベルギーのリエージュの王立コンセルバトワールでドラマを学んだ。
サラ・デマルト(Sarah Demarthe)氏はベルギーのモンスにある王立コンセルバトワールでドラマを学んだ。この時、モロー氏が彼女に人形劇を教えたことがきっかけとなり、デマルト氏の才能を認めたモロー氏は彼女が卒業すると自分のTOFにひっぱったという。
TOFには数多くのヒット作がある。’Bistouri’はデタラメ医師が繰り広げる奇想天外の手術の模様で、これもTOFの定番だ。そのほか、老人のエロスをユーモアを込めて描く出し物’Les zakouskis erotiks’もある。老妻の入浴を興味津々に見つめる老夫の物語だ。TOFのレパートリーを見ると、笑いを込めて人間を辛辣に描いている。その切れ味が魅力である。だが、何よりもTOFが操る人形たちが人間をよく表現している、ということである。
■’Bistouri'(デタラメ医師の手術)
http://www.youtube.com/watch?v=loLFcvX26HY
■’Les zakouskis erotiks’(老妻の入浴を見る老夫)
http://www.youtube.com/watch?v=9vRC5fgDnhA
■TOFのホームページ
http://www.toftheatre.be/Tof_Theatre.html
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