2013年10月17日11時08分掲載  無料記事
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国際

【北沢洋子の世界の底流】スーダンの反乱

 このところ、日本のマスコミは言うまでもなく、世界のマスメディアも報道しないが、世界の各地で、政府に対する人びとの大規模な反乱が起こっている。ここで、紹介するのは、最近南スーダンが独立した残りのスーダンでの反乱である。ほとんどの場合、人びとが街頭に出て、抗議デモを行い、それを武装治安警察が弾圧し、さらに弾圧の犠牲者の葬式デモが起こるというサイクルをたどっている。 
 
 スーダンでは、9月末から毎日、首都ハルツームをはじめ各地で、デモが続いている。デモ隊が、道路を封鎖し、ガソリン・スタンドに火をつけ、それに対して、警察が催涙弾と実弾を発射する。その犠牲者の姿がフェイスブックやツイターなどのソーシャル・メディアに掲載され、怒った人びとが葬式デモをする。それに対して、同じような弾圧が繰り返されている。 
 
 スーダン政府はインターネットを切断し、「デモ隊どうしの殺し合い」だと説明した。これに対してスーダンの人権団体は、「犠牲者の数は100人以上に上り、さらに増えるだろう」と声明している。 
 
 実は、スーダンでは、この種の抗議デモは珍しいものではない。すでに2010年、債務危機のなかで、反乱が起こった。最近の例では、昨年7月、デモが数週間続いた。これは、政府が生活必需品の価格を上げることを発表したことによって起こった。これに対して治安警察が催涙弾やゴム弾を発射して鎮圧した。 
 
 しかし、今回は異なった。ガソリンの価格が1年間で2倍になったのだ。例えば、2011年には、1ガロンのガソリンが12スーダンポンドだったものが、今、21スーダンポンド(4.77ドル)になった。 
 
 ガソリン価格がすべての商品の価格に連動しているため、全ての物価が2倍になった。スーダンでは、政府の予算の75%が南スーダンや、ダルフールなどの軍事費に使われ、教育や医療費などは、わずか5%以下に留まっている。 
 燃料に対する補助金を廃止したことのほかに、緊縮政策によって、馬鹿げたことが横行している。例えば、スーダンには土地が有り余っているのに、今日、野菜や果物を輸入している。その理由は、政府が農民に対して、さまざまな税金を課しているからである。その結果、ほとんどの農民は農業銀行に借金があり、そして、多くの農民が債務を返済出来ないために、投獄されている。 
 
 反乱は、スーダンの政治、経済、そして治安体制の崩壊に繋がる。政府はこのことを良く知っている。そのために、弾圧も残虐になっている。 
 
 9月29日の日曜日に、オマル・アル=バシール大統領は、緊縮政策の一環として、財政赤字を解決するために、ガソリンに対する補助金を廃止すると発表した。その結果、ガソリンの値段は高騰した。 
 
 かってない大勢の人びとはすばやく街頭に出た。デモの中には、「Sudan Change Now」のような社会運動組織もいれば、Ashraf El−Ga‘alyのような著名なBlogger もいた。 
 
 Ashraf El-Ga‘alyによれば、今回のデモに対する弾圧は、これまでと異なった。最初から無差別に実弾を発射し、多数の死者を出した。同時に、無差別に家宅捜査し、デモに関係しているといって逮捕した。また夜半、インターネットへのアクセスを切断した。デモを報じた新聞を発刊停止にした。 
 
 内外のマスメディアが、治安当局に対して、デモに対する弾圧について、質問したとき、彼らの返事は二転三転した。最初は、死者が出たことを、否定した。そして、殺したのはデモ隊だと言った。次に、デモ隊が公共の場を破壊したからだと、言った。 
 
 明らかなことは、制服を着た治安部隊が、街頭でデモ隊を殺したということである。 
 
 スーダンの物価高騰の抗議デモは、平和的なデモであるが、中には、これに乗じて、破壊や掠奪行為を働く者がいる。これは、数百人ではなく、数十人に過ぎない。彼らがATMを破壊した時、あたかも彼らを守るかのように、制服の警官が3人配置されていた。デモ隊はこの警官たちを捕まえ、名前とIDナンバーを発表した。 
 
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国際問題評論家 
Yoko Kitazawa 
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