2013年11月03日17時31分掲載
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米国
アメリカ書店主協会(ABA)がアマゾンを批判
今年7月30日、オバマ大統領はアメリカ、テネシー州チャタヌーガで<中流層を育てることが大切だ>という演説を行った。その時、オバマ大統領は<(ネット通販の)アマゾンが雇用を増やして米経済に貢献している>と賛美したらしく、またその演説会場もアマゾンの物流倉庫だった。
そのことに対してアメリカで実際に書店を街で経営している書店主の協会、American Booksellers Associationが怒りの声明を出し、ウェブサイトで批判記事をUPしている。
またアメリカ各地の書店主もオバマ大統領に演説会場を考え直して欲しいなどといった手紙を書いたりしたようだ。アマゾンが成長する傍ら、各地の書店は衰退の一途をたどっているからだ。ある書店主はアマゾンの物流倉庫の労働環境も悪いとして「(オバマ大統領が言ったような)雇用を創っているのではなく、雇用を壊している」と批判している。
■’Booksellers Speak Out Against Amazon, Educate Customers’
By Sydney Jarrard on Thursday, Aug 15, 2013
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http://www.bookweb.org/news/booksellers-speak-out-against-amazon-educate-customers
この記事で紹介されている書店主の声によればアマゾン(本社:シアトル)は靴のネット販売で急成長しているZappos.com(ザッポス)やベビー用品のDiaper.comも傘下におさめて様々な商品を手がけている。だから、アマゾンがアメリカの雇用を減らしているのはなにも書店業界に限らない、と警告している。
数年前から、アマゾンの全米各地の物流拠点は州に消費税を払うべきかどうか、といった議論が行われてきた。
’Since the company’s founding, Mr. Bezos held on tightly to a 1992 Supreme Court decision that said mail-order merchants did not have to collect tax in states where they did not have physical operations. (Consumers were supposed to pay a use tax directly to the state, but few did.)’(ニューヨーク・タイムズ 2012年の記事から)
アマゾンの創設者であるBezos氏は1992年の最高裁の判決をよりどころにしてきた。最高裁の判決によると、企業の’物理的な’(フィジカルな)事業拠点がなければその税を州に収めなくても良いとされた。アマゾンが創設されたのは1994年である。
全米書店主協会の資料によると、2013年1月現在で、ニューヨーク州やカリフォルニア州など8州でアマゾンは税金を収めていたが、収めてない州もまた存在していた。人口比で見ると払っていた州の人口は全体の人口比で30%に過ぎない。調べはInstitute for Local Self-Relianceによる。
http://www.bookweb.org/advocacy
しかし、米国家だけでなく、アメリカ各地の州も財政難である。多くの人口を抱えるニューヨーク州、カリフォルニア州、テキサス州などは強力にアマゾンから消費税を徴税したいと考えていたらしい。
■アマゾンがカリフォルニア州で初めて消費税を払わされたときの記事(昨年のニューヨーク・タイムズ紙)
http://www.nytimes.com/2012/09/12/technology/amazon-forced-to-collect-sales-tax-aims-to-keep-its-competitive-edge.html
■「10年遅かった」・・・アマゾンが州に消費税を払う日(ニューヨーク・タイムズ紙から)
http://www.nytimes.com/2013/04/27/technology/internet-sales-tax-coming-too-late-for-some-stores.html
10年前からアマゾンに各州での売上に応じた消費税を払わせるべきだった。そうすれば多くの小売業者は生き残って営業を続けることができたはず、とする今春の記事(4月26日)米下院がアマゾンに各州で消費税を払わせることを議論していた頃のことだ。
しかし、消費税はアマゾンにとってはすでに大きな打撃ではない、なぜならアマゾンは低価格戦略からさらに進化して、商品をより早く届けるなど、サービスを次の段階にすでに進化させたからだ、という声も紹介されている。アマゾンは各州で消費税を払う以上は、物流拠点をもっと多く各地に配置して、より早い配達などのサービス強化にシフトしていくのかもしれない。
ところでニューヨーク・タイムズは新法案は100万ドル以上の売上を他の州で行った業者に限る、という条件を記事の訂正で記載している。これはネット通販でも零細業者を保護するための条件が付せられたからのようだ。
ユニークなネット販売の手法で業績を急激に伸ばした靴の通販「ザッポス・ドットコム」をアマゾンが買収したことは、アマゾンが次の段階へ進むべく、新たなサービスの手法を模索していたからかもしれない。
■ニューヨーク・タイムズSales Are Colossal, Shares Are Soaring. All Amazon Is Missing Is a Profit’(売上はすさまじい額 シェアは鰻のぼり アマゾンにかけているのは企業利益)
http://www.nytimes.com/2013/10/22/technology/sales-are-colossal-shares-are-soaring-all-amazoncom-is-missing-is-a-profit.html?_r=0
アマゾンは今年750億ドルの売上を計上するのではと推測されている。このような業界のガリバーが将来、利益がほとんどないということでは済まされないだろうと指摘している。(ちなみに昨年のアマゾンの総売上は610億ドルだった)
すでに世界の富豪に名を連ねるアマゾン創設者のJeffrei Bezos氏(49)は250億ドルを投じて(ルモンドディプロマティークによるとBezos氏個人の財産の1%に当たるそうである)新聞経営で知られたグラハム一族からワシントン・ポスト紙を買収した。
http://articles.washingtonpost.com/2013-10-01/business/42568774_1_jeff-bezos-washington-post-co-katharine-graham
■ルモンドディプロマティーク最新号でアマゾンを特集
「アマゾン 画面の裏側」’Amazon, l'envers de l'ecrran '(Novembre 2013号)
フランスの書店組合もアマゾンに抗議している。アマゾンは欧州にも拠点となる物流倉庫を作っており、最初の切込先はドイツだった。ドイツには現在9つめの物流倉庫が建設中である。またフランスにも物流倉庫は作られている。しかし、作業現場の環境や賃金・雇用条件などがよくないという指摘もある。さらに単に労働者の賃金が安いというだけでなく、将来は今アマゾンが購入を進めているロボットに置き換わっていくだろうから雇用はなくなっていく、とも書かれており、記事にはこんな記載もあった。
「フランスの書店組合によると、売上が同じ場合、町の書店ならインターネット販売の18倍雇用を生み出せる。2012年の1年だけでもアメリカの書店主協会(American Booksellers Assocation,ABA)は42000人の雇用がアマゾンによって失われたと試算した。アマゾンが1000万ドルの売上を上げる毎に33人の雇用が失われると仮定した場合の試算である。」
■パリの文化の危機 家賃の高騰で書店が閉店 芸術家は郊外へ
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201310262321046
「パリでまた一つ書店が閉店することになった。モンマルトルで25年営業してきたブッシュラ−デン(BUCHLADEN)書店だ。この書店はドイツの本を中心に日本文学の翻訳書も含め、外国書の専門店として知られてきた。しかし、1年以内に店を閉じることになるという。
ドイツ語を堪能に話す書店主のギゼラ・カウフマン(Gisela Kaufmann)さんがブッシュラーデン書店を開いたのは1988年。その理由はフランスでドイツの本があまり親しまれていない現状があったからだ。最初はドイツ文学の原書が3割、翻訳が7割だったが最近は逆転して、原書が7割、翻訳が3割になった。つまり、それくらいフランス人が(翻訳でも)ドイツ文学を読まなくなってしまった、ということのようだ。カウフマンさんはこの現状を悲しく思っている。カウフマンさんはこれまで店で朗読会なども度々催して、地域の文化の拠点の1つだった。モンマルトルを舞台にした映画「アメリ」に出演した個性派俳優のドミニク・ピニョンさんもブッシュラーデン書店で朗読を行ったひとりだ。
カウフマンさんが閉店せざるを得なくなった理由は経済的な理由だ。インターネット情報の氾濫で本の売れ行きが減っている上に、業界のガリバー、アマゾンの影響も少なくないとカウフマンさんは言う。たとえばアマゾンは税金を払っていないし、店を地域に持たないから家賃とも無縁だ。そんな状況のもと、パリの家賃が高騰している。・・・」
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