2013年11月23日20時23分掲載
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コラム
フランスから見る特定秘密保護法案
特定秘密保護法案が衆院を通過しようとしている。この法案が通ったら日本の民主主義は終わってしまうと嘆く声が聞こえてくる。アンケート調査などによると、半数以上の日本国民がこの法案に反対か、もっと時間をかけた審議を求めているようだ。異国に滞在中なのでインターネットでかろうじて事の成り行きを推察するだけだが、印象として多くの人が憤っており、ある人は絶望しており、またある人は絶望するのはまだ早い、やれることはある、と激を飛ばしている。
筆者が滞在している人権大国フランスにおいても極右政党と言われてきたFN(国民戦線)が勢力を伸ばしており、それだけでなく2017年の大統領選を狙って様々な手を打っている。たとえば「もう極右とは呼ばせない」と言うキャンペーンだ。「極右と呼んだメディアは告訴する」と党首のマリーヌ・ルペンはこの秋記者発表した。そのことで「極右とは?極左とは?」と言った定義の議論もメディアで起きている。いずれにせよ、かつて極右政党と呼ばれた政党が今ではメインストリームの、つまり有権者が選択肢に入れていい、普通の政党になろうとしているのである。
さらに安倍首相もカムバックして現政権を作ったが、UMP(国民運動連合)のサルコジ元大統領もカムバックしようとしているようだ。サルコジ大統領については2007年の大統領選にまつわる選挙資金スキャンダルがしばしば報じられてはいるのだが、弁護士でもあるサルコジ大統領は生き残ると思われている。このようにいったんサルコジ大統領とその政権に「NO」をつきつけ社会党の政権を生んだフランスだが、10%を越える現状の失業率が改善できないと社会党の未来は厳しいものになるかもしれないのである。簡単に比較すべきでないのだろうが、今のフランス社会党に一時期大躍進した日本の民主党を重ねてしまう。ある政党に期待して、それが裏切られたらその反動で今度は逆に振り子が揺れてしまう。フランスでもその可能性がささやかれている。
こんな時代だから日本では無力感を持つ人も増えているようだ。日本の次期衆院選まであと3年もある。しかし、3年後、波が再び来るのだろうか。「この法案が通ったら終わり」というブログやツイッターの言葉をよく見る。しかし、「終わり」という言葉を使うのは早いのではないだろうか。どんな時代も必ずある日終わるものだからだ。チリでアジェンデ社会党政権がクーデターで倒されてから、クーデターの首謀者であるピノチェット大統領が辞任するまでおよそ17年かかった。しかし、最後の日は来たのだ。選挙の結果でこうした事態が起きているのだから、この法案が通ったとしても将来の選挙で変えていくしかない。問題はその政治意思が持続できるか、である。なぜなら3年後になると、別のイシューが新聞やテレビを賑わせているかもしれないからだ。
余談ながら、フランスで何人かの家庭を訪れたが、テレビを家に持っていた家族は1軒だけだった、ということも書いておきたい。10年くらい前からテレビを廃棄したという人に何人も会った。テレビの映像はある政治・経済の目的にそって、視聴者を誘導するために作られており、テレビは信頼できるメディアではない、と考える人が増えているのだ。筆者はテレビの世界で生きてきた人間だから、こう言われると辛い。
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