2013年12月04日13時36分掲載
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政治
石破幹事長は特定秘密保護法の本質を暴露した とめどなく広がる秘密と調査対象者 根本行雄
現政権は特定秘密に関わるのは極めて少人数であるかのように欺瞞している。しかし米国では2012年度、約1億件の秘密指定がなされた、同年度、秘密を扱うことができる有資格者は491万人に上るとローレンス・レペタさんが述べているように、その対象はどんどんと拡大し、民間人の家族まで調査対象になることは確実だ。つまり、この法律案は国民全体を権力の監視の下に置くものなのだ。そして、戦前のように、当局が処罰対象を恣意的に運用するようになることも確実だ。実際の調査は、警察官が行なうことになる。そうなると、捜査機関は功名心から、どんなことでも検挙しようとする。法律の「独り歩き」が始まるのだ。そうなった時は、もう、だれにも止められない。憲法9条は空文となってしまうだろう。
自民党の石破茂幹事長が自らのブログで特定秘密保護法案に反対する市民団体らのデモを「テロと本質的に変わらない」と批判したことについて、12月3日、菅義偉官房長官は午前の記者会見で、石破氏のブログによる特定秘密保護法案審議への影響について「今後の進行に影響はない」と強調した。森雅子同法案担当相は同日の記者会見で「市民のデモは法案の『テロリズム』に当てはまらない。表現の自由は何より大切だ」と説明した。石破氏はブログの発言を撤回したが、国民の声に耳を傾けない政権のありようは特定秘密保護法案の本質を象徴的に露呈している。反対の声をさらに大きく。
毎日新聞(2013年11月21日)朝刊にて、ローレンス・レペタさん(明治大学法学部特認教授)は「日本は米国の経験に学んでほしい。秘密に行動できる幅広い権力を官僚に与えることは、間違いなく問題を引き起こすだろう。」と述べ、下記のような米国の現状を伝えている。
内部告発サイト『ウィキリークス』に米国の外交公電などを渡したブラッドリー・マニング元米陸軍上等兵は当時、22歳だった。米中央情報局(CIA)のエドワード・スノーデン元職員が国家安全保障局(NSA)による情報収集を暴露したのは29歳の時。なぜ、こんな若者が機密を扱う立場にいたのか。それは、処理しなければならない秘密情報があまりにも多いからだ。
米国では2012年度、約1億件の秘密指定がなされた。同年度、秘密を扱うことができる有資格者は491万人に上る。国防総省の元高官、モートン・ハルペリン氏は『通常の情報が秘密指定され、本当の秘密を守るのが難しくなっている』と指摘する。洪水が土手からあふれるように秘密情報が漏れる一方、漏らした者に厳罰を与える。それが米国の現状だ。」
特定秘密保護法案という法律が成立すれば、だれかが国の秘密を漏らしてはいないか、漏らしそうな人間かどうかを調査する権限を警察官などに与えることになる。これを「適性評価」という。ここに、大きな問題点の一つがある。
毎日新聞(2013年12月02日)に、「民間人監視される懸念」という記事が載っている。そこから、一部を引用する。
特定秘密の取扱者に行われる適性評価は参院審議の最も重要な論点のひとつだ。公務員のみならず民間人も対象となり、個人の広範なプライバシー情報が政府に把握されるだけに、市民に過剰な監視網が敷かれる懸念がある。
適性評価は特定秘密を扱う国家公務員らが情報を漏らすおそれがないかどうかを政府が事前にチェックする制度だ。
調査事項は「スパイやテロとの関係」「犯罪、懲戒歴」「情報の扱いに関する違法な行為歴」「薬物の乱用や影響」に加え「精神疾患」「飲酒の節度」「借金など経済状況」など幅広い。父母、配偶者、子、兄弟姉妹や同居人の住所、生年月日、旧国籍も含めた国籍まで確認される。
現在も「特別管理秘密」を扱う国家公務員約6万5000人を対象に同様の調査がなされており、適性評価対象者のベースとなる。本人の同意が前提であり政府は「プライバシー侵害にはあたらない」と説明する。だが、上司から評価を受けるよう求められ、拒否することは事実上難しかろう。
問題が大きいのは国と契約する企業などで特定秘密を提供される民間人も対象となる点だ。企業の下請けや派遣労働者であっても特定秘密を扱う際は適性評価の対象になる。
調査は秘密を指定する行政機関が行うが「安全保障に関する情報のうち特に秘匿が必要なものの漏えい防止」のため相互協力も認める。このため公安警察に調査が広範に委ねられる可能性がある。それは、監視社会につながりかねない。森雅子特定秘密保護法案担当相は「思想信条は調査事項にない」と説明するが、意図的な調査を防ぐ手立てが講じられているとは言い難い。」
現政権は特定秘密に関わるのは極めて少人数であるかのように欺瞞している。しかし、ローレンス・レペタさんが述べているように、その対象はどんどんと拡大し、民間人の家族まで調査対象になることは確実だ。つまり、この法律案は国民全体を権力の監視の下に置くものなのだ。そして、戦前のように、当局が処罰対象を恣意的に運用するようになることも確実だ。実際の調査は、警察官が行なうことになる。そうなると、捜査機関は功名心から、どんなことでも検挙しようとする。法律の「独り歩き」が始まるのだ。そうなった時は、もう、だれにも止められない。憲法9条は空文となってしまうだろう。
日本国憲法の12条には「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と書かれている。私たちは特定秘密方法案が廃案になるように大きな声を出していかなければならない。私たちこそが主権者であり、自由と権利を保全する責務を有しているのは私たち自身なのだから。
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