2013年12月04日21時41分掲載
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社会
官僚の逆襲 〜国民に実態を見せない仕組み〜特定秘密保護法
昨日、学者の会が特定秘密保護法案に対して反対の意見を表明した。その場で多くの学者が意見を述べたが、中でも東大教授の大沢真理氏による意見表明は特定秘密保護法案可決後の寒い風景を先取りしていた。つまり、税金で活動している官僚たちが国民にそのデータを還元したがらない、という実情である。以下は大沢氏の発言部分の起こしである。
「 大沢真理(東京大学教授、経済学、社会政策研究): 東京大学の大沢と申します。経済学部出身の社会政策研究者です。近年では、所得格差や貧困の問題に発言をして参りました。その経験から申し上げます。つまりですね、貧困率。貧困の程度というような、権力者にとっては往々にして不都合なデータが、いかに長年の間封じられてきたかということを、身をもって痛切に知っているという立場から、やや特定秘密保護法案というスペスティックなテーマにしたら広げすぎているかもしれませんけれども、申し上げたいと思います。(中略)
貧困率については、そもそも、「調査をするな」という圧力が研究者に対してはかかっておりましたし、国が集めた統計の中から計測をしようと思っても、その計算をするなという圧力が、公然・隠然と絶えず掛かっておりました。それから、国際機関や研究者が行った貧困率の計測に関しては、「統計が悪い」という批判、「使っている統計が間違っている」という批判が行われております。国会答弁も行われました。しかし、これは白を黒とまではいわなくても、実は緑のデータを赤と言いくるめてでも、こういう貧困問題を直視したくないということが、長年、60年以上続いてきた。この風向きが変わったというのは、民主党政権が発足をしたら一ヶ月のうちに厚生労働省が貧困率を計測して、大臣記者会見で発表をした。それから生活保護基準以下の所得しかないのに、生活保護を受けている人は、そのうち何%しかないかというようなことも、厚生省・厚生労働省は60年以上計測してきませんでしたけれども、この計測というのもやられることになりました。やっと風穴があいたと思った間もなく、今の状況ですから、こうやって一度風穴があいて、また呼び戻しという中で、一線の窓口のお役人たち。それからそのお役人たちと接触をする研究者の中でも管理的な立場にある人たちが、いかに萎縮していくかということは、もう容易に想像がつくかと思います。」(内田樹氏のブログから抜粋)
大沢氏によると、国は民主党政権ができるまで貧困率のデータを公開させないような圧力をかけていたという。かつて民主党議員の活動で年金システムの出鱈目な管理実態が暴露されたが、今後そうしたこともたとえば治安維持を名目に特定秘密に指定されてしまえば出てこなくなる。情報公開をモットーにした民主党政権が終了して、自民党政権に移行してわずか1年である。民主党政権時代に存亡の危機感を持った官僚が多かったのではないだろうか。
■「特定秘密保護法案に反対する学者の会」記者会見(IWJ)
http://www.ustream.tv/recorded/41331101
■ロシアから見る特定秘密保護法案 〜日本がソビエト化する日〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201311241930270
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